旧統一教会側に過料10万円、地裁決定 質問権は「適法」
宗教法人法に基づく質問権行使に回答を拒んだとして、文部科学省が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に過料を科すよう求めた裁判で、東京地裁(鈴木謙也裁判長)は26日、教団の田中富広会長に過料10万円の支払いを命じる決定をした。同省による質問権行使を「適法だった」と判断した。
教団を巡っては、文科省が2023年10月に東京地裁に解散命令を請求しており、今回の決定を出した同じ裁判長の下で審理が進んでいる。請求の前提となっている質問権の行使を適法とした決定が、解散命令の審理に影響を与える可能性がある。
教団側は決定に不服がある場合、高裁に即時抗告ができる。
宗教法人法は「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあった場合、裁判所が宗教法人の解散を命令できると定める。該当する疑いがある法人には質問権の行使が認められている。回答を拒んだり虚偽の報告をしたりすれば行政罰として10万円以下の過料を科せると定める。
今回の裁判手続きで主要な争点となったのは、同法が規定する「法令違反」の対象だ。
教団側は「刑事罰を伴うもので民法の不法行為は含まない」と主張していた。
26日の地裁決定はこうした教団側の主張は採用せず、法令違反の対象について、刑事事件に限らず「民法上の不法行為は含まれると解するのが相当」と指摘した。
その上で、信者の寄付勧誘などを不法行為と認定した22件の民事判決を引き合いに「多数の被害者の財産権や人格権を侵害する違法な行為が繰り返され、重大な損害が生じていた」と指摘。文科省の主張に沿う形で、質問権の行使が宗教法人法の求める要件を満たしていると判断した。
文科省は22年11月以降、教団に質問権を計7回行使。教団側が組織運営や資金の流れに関する質問など500項目のうち100項目以上に回答しなかったとしている。
地裁決定は重複した質問などに答えなかったとする教団側の主張について、一部を除き「正当な理由があると言うことはできない」と結論づけた。
並行する解散命令をめぐる裁判では、法令違反の範囲が最初の争点となっており、今回の決定で示された解釈が踏襲される可能性がある。そのうえで、違反の内容や程度について解散命令に該当するかどうか、事案ごとに具体的な検討が進められる。
国側は「組織性、悪質性、継続性」の3要件を満たせば、解散命令に当たるとの基準を示し、地裁に約5000点の証拠を提出した。教団側は霊感商法などの問題を受け、組織改革を進めた結果、要件は満たさないと主張する。
2月には国側と教団側が意見を述べる「審問」が行われた。教団側は新たな書面の提出や証人尋問を検討するとし、審理は長期化する可能性がある。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、文部科学省は東京地裁に解散命令を請求しました。安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに高額献金などの問題が改めて注目され、文化庁は2022年11月から宗教法人法に基づく質問権を7回行使。170人を超える被害者らへの聞き取りも進め、解散命令請求の要件を満たすと結論づけました。教団側は全面的に争う方針を示しており、司法判断の確定には長期を要するとみられます。