宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」に米アカデミー賞
【ロサンゼルス=中藤玲】米映画界最大の祭典である第96回アカデミー賞の授賞式が10日(日本時間11日)、米ハリウッドで開かれ、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞に選ばれた。日本映画としては2003年の「千と千尋の神隠し」以来、21年ぶり2度目の長編アニメーション賞受賞となった。
同部門にノミネートされていたソニー・ピクチャーズの「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」や米ウォルト・ディズニーの「マイ・エレメント」などを抑えて受賞した。
授賞式には、宮崎監督とスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーは出席しなかった。記者会見室で鈴木氏からのメッセージが読み上げられ、「宮崎監督の新作は10年ぶりで、映画を取り巻く環境もすっかり変わったが、世界中の多くの皆さまに見ていただけたことをうれしく思います。宮崎監督も私もずいぶんと年を重ねてしまいましたが、『もっと働け』というメッセージだと思って精進します」とした。
現在83歳の宮崎監督は13年に長編制作からの引退を宣言していたが、撤回して同作を制作した。実母を亡くして戦争で疎開した少年が主人公で、青サギと出会って異世界に迷い込む物語だ。
英語タイトルは「The Boy and the Heron(少年とサギ)」で、北米では23年12月に公開して最初の週末は興行収入ランキングで首位だった。ジブリとしても過去最高だ。
海外で高く評価され、24年に入り米ゴールデン・グローブ賞のアニメ映画賞、アニメ界のアカデミーと呼ばれる米アニー賞で絵コンテ賞とキャラクターアニメーション賞の2冠に輝いた。
米アカデミー賞の開催に向けた2日のパネルディスカッションでは、宮崎監督と鈴木氏が対談映像を寄せた。同作が自伝かと問われた宮崎監督は「いや、でも心の中にあったことですね。そういうことだと思います」と語った。
7年がかりで制作したことについては「終わらない作品じゃないかと思った。(終わったのは)お金が続いたからです」(宮崎監督)と笑った。スタジオジブリの福田博之社長も10日にロサンゼルスで、「通常は2〜3年ほどの開発期間を定めず、自由に手描きのアニメーションを追求してもらった」と話していた。
宮崎監督は14年、米アカデミー賞の主宰団体から卓越した業績を残した世界の映画人に贈られる名誉賞も授けられている。
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(更新)
アカデミー賞は映画芸術科学アカデミーが主催する世界で最も古い映画賞で、米映画界最大の祭典として知られます。2024年3月10日(日本時間11日)の第96回アカデミー賞では、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞に選ばれ、「ゴジラ-1.0」から山崎貴監督ら4人が視覚効果賞に日本作品で初めて受賞しました。日本作品では過去に濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」などが受賞しました。