米就業者数、2月27.5万人増 市場予想上回る
【ワシントン=高見浩輔】米労働省が8日発表した2月の米雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比で27万5000人増えた。市場予想の20万人増を上回った。失業率は予想に反して上昇し、平均時給の伸びは予想を下回った。雇用の勢いは底堅いが、おおむね落ち着きつつある。
1月の就業者数は速報時点で35万3000人増と予想の2倍近く増えた。今回は22万9000人に修正された。1月は季節要因で数字が振れやすいため、雇用の減速基調に変化があったのかをみるうえで2月の数字が注目されていた。
失業率は3.9%だった。市場関係者は1月から横ばいの3.7%を予想していた。25カ月連続で4%を下回った。
平均時給は前月比で0.1%、前年同月比で4.3%上昇した。いずれも市場予想を下回った。
公表直後の米債券市場では早期利下げ期待が高まって2年債利回りが低下した。
「現場スタッフが離職しなくなったため、採用は戦略的な部署に限定した」(クリーブランド連銀地区の銀行関係者)。米連邦準備理事会(FRB)が6日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では需給の改善を示す動きが目立つ。
新型コロナウイルス禍が深刻になった2020年3〜4月に計2264万人とおよそ1年分の一時解雇(レイオフ)が集中し、早期退職も増えたため、企業はその後の経済回復局面で過度な人手不足に陥った。
22年には転職市場で厚待遇の募集が増え、離職の急増がさらに企業を求人に駆り立てた。こうした混乱がようやく平常な状態に戻りつつある。離職は1月に338万件に減少し、コロナ禍前の水準を下回った。
全米自営業者連盟(NFIB)の2月調査では今後3カ月間に新規雇用を計画していると回答した経営者が前月比2ポイント減の12%となり、20年5月以来の低水準だった。
「労働市場は依然として比較的タイトだが、需給バランスは引き続き改善している」。FRBのパウエル議長は7日の議会証言でも雇用情勢の正常化に自信を見せた。
この傾向が続くのかどうかは不透明な面もある。22年3月に1218万件だった求人件数は23年7月には880万件まで減ったものの、直近の24年1月は886万件と横ばい圏にある。コロナ禍前のピークを100万件強上回る水準だ。
働き手の回復ペースも鈍ってきた。労働参加率は23年8月に62.8%まで回復して以降は24年2月の62.5%まで頭打ちになっている。人手不足は緩和したが、解消までは遠い状態だ。
FRBの利上げ開始から2年がたち、失業率の上昇を伴う景気後退の懸念は薄らいだ。とはいえ、景気を失速させずにインフレ率を2%に安定させる経済の軟着陸(ソフトランディング)はまだ十分に見通せない。
パウエルFRB議長は利下げ転換の時期についても時間をかけて経済データを見極めたうえで判断する考えを繰り返している。
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