藤井聡太八冠、タイトル戦20連勝の新記録 王将戦3連覇
将棋の第73期王将戦七番勝負の第4局が7、8日の両日、東京都立川市で指され、先手の藤井聡太王将(21)=王座・竜王・名人・王位・叡王・棋王・棋聖との八冠=が挑戦者の菅井竜也八段(31)を破り、4勝0敗で3連覇を果たした。これでタイトル戦は20連勝。故・大山康晴十五世名人が1963〜66年に築いた19連勝を上回り、58年ぶりの連勝記録更新となった。
対局を終えた藤井八冠は「(20連勝は)意識していなかった。(居飛車対振り飛車の)対抗形は中盤が長くなるが、(2日制で)長い時間かけて考えられたのはいい経験になった」と振り返った。
王将戦第4局は、菅井八段の振り飛車に、居飛車の藤井八冠が角交換を挑み序盤から激しい展開となった。前例のない力戦に進み、中盤以降、模様の良さを生かした藤井八冠が優勢となり押し切った。
藤井八冠は2020年、史上最年少で初タイトルの棋聖を獲得。以降も負けなしでタイトル奪取と防衛を重ね、23年秋には8つあるタイトルのうち唯一手にしていなかった王座を獲得して前人未到の全八冠制覇を果たした。八冠達成後も竜王を防衛、タイトル戦連勝記録を19に伸ばしていた。
藤井八冠は14歳でのデビューから29連勝の記録を残しており、第一人者となって最高峰のタイトル戦での連勝記録も打ち立てた。年度勝率は8割を下回ったことがなく、タイトル戦でも8割以上の勝率を維持する。スコアだけ見れば余裕すら感じさせる戦いぶりで、これまで最終局までもつれ込んだのは1度だけ。黒星先行でカド番に追い込まれたこともない。
菅井八段とのタイトル戦は、23年の叡王戦五番勝負以来2回目だった。前回は藤井八冠の逆転勝ちもあり僅差での防衛だったが、今回の王将戦七番勝負は早々に形勢に差がつく対局が多く、内容でも圧倒した。敗れた菅井八段は「研究不足で苦しくなる将棋ばかりだった。ミスが多すぎた」と反省しきりだった。
藤井八冠は現在、同世代の伊藤匠七段(21)を挑戦者に棋王戦五番勝負を戦っている。春以降は名人戦、叡王戦と防衛戦が続く。死角は全く見えず、完全な「1強」時代に入っている。連勝記録をどれだけ伸ばせるかに注目が集まる。
藤井八冠「対応する力ついてきた」
王将戦3連覇を果たし記者会見で新記録について聞かれた藤井八冠は「記録は意識していなかったが、逆に意識しても目指せるものでもないので、光栄だと思う。これまでのタイトル戦を振り返ると、苦しいシリーズも少なからずあったので、その中でこういう結果を残せたのは幸運だった」と落ち着いた口調で語った。
タイトル戦20連勝の始まりは、20年の棋聖戦だった。「当時のことはそれほど覚えていないが、当時よりも序盤はいろいろな形に対応する力がついてきたと思う」と成長を実感する。
今シリーズは開幕まで対局間隔が空き、菅井八段が得意とする「振り飛車」への対策にも十分な時間がとれたという。「(菅井八段との前回のタイトル戦である)叡王戦では序盤でペースを握られたり、中盤で急所をつかめずに時間を使ったりしたので、今回はその点を意識して練習将棋で対抗形の経験を積んで臨んだ」
内容でも圧倒し、2日制の長時間ではさらにすごみを増すようにも思える。「長い持ち時間を生かして、序盤からより考えて一手一手を指すことができた。その点、充実したシリーズだった」と振り返った。
日本将棋連盟会長・羽生善治九段の話 塗り替えるのが途方もなく難しい記録ですが、見事に達成されました。これを礎に、大棋士への道のりを更に歩まれて行くことを期待しています。
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