米就業者数、1月35.3万人増 市場予想大きく上回る
【ワシントン=高見浩輔】米労働省が2日発表した1月の米雇用統計は非農業部門の就業者数が前月比で35万3000人増えた。伸びは市場予想の18万人程度を上回った。失業率は2年間連続での4%割れとなった。労働市場は強さを保っている。
2023年11月は18万2000人増、12月は33万3000人増に修正された。雇用の勢いは21〜22年からは減速傾向にあるものの水準はなお高い。教育や医療、政府部門など景気動向に影響されない分野の伸びが引き続き大きかった。
失業率は前月と同じ3.7%だった。市場予想の3.8%を下回った。24カ月連続で4%を下回るのは1970年以降で初めてとなる。
平均時給は前年同月比で4.5%上昇した。市場予想の4.1%を大きく上回った。前月比でも0.6%増え、前月の0.4%から加速した。
直後の金融市場では米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ期待が後退した。
金利先物市場が織り込む3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ予想が4割から2割に低下。債券市場では米2年債利回りが4.23%から4.39%に上昇(価格は下落)した。対ドルの円相場は1ドル=148円程度と発表前から1円以上の円安・ドル高が進む場面もあった。
過熱状態が正常化に向かいつつある顕著な例は転職を中心とする自発的な離職の減少だ。2022年4月に450万人まで増えてグレートレジグネーション(大離職)と呼ばれたが、23年12月には339万人と新型コロナウイルス禍前の水準まで落ち着いた。
企業の引き合いが和らいだ影響が大きい。アトランタ連銀によると、転職した人の賃金上昇率は22年7月に8.5%に達し、同じ職場にとどまる人の5.9%を上回っていた。23年12月はそれぞれ5.7%と4.9%に鈍化し、伸びの差は縮まった。
米バンクレートの調査ではこれから1年間で転職を考えている人が23年3月時点で全体の56%にのぼり、前年の51%から増加していた。1990年代半ば以降に生まれたZ世代に限ると78%に高まる。理想の転職先を見つけるのは難しくなりつつある。
人手不足が解消されたわけではない。企業のレイオフ(一時解雇)は23年12月時点でも161万人と、15〜19年平均の180万人を下回って推移する。求人も900万件とコロナ禍前の記録を150万件上回ったまま下がりきってはいない。
23年は25〜54歳の働き盛り世代の労働参加率が上昇し、賃上げ率の鈍化と堅調な雇用増が両立した。経済の軟着陸を目指すFRBにとって理想に近い展開だったが、働き手の回復傾向がどこかで止まればこのバランスも崩れかねない。
FRBのパウエル議長は1月31日の記者会見でも勝利宣言を急がず、時間をかけて経済動向を見極める考えを強調した。
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