EU、ウクライナ8兆円支援で合意 中期予算で反攻後押し
【ブリュッセル=辻隆史】欧州連合(EU)は1日、臨時の首脳会議を開き、500億ユーロ(約8兆円)のウクライナへの資金支援で合意した。2021〜27年のEU中期予算計画を見直し、ロシアの侵攻を受けるウクライナの反攻や復興を後押しする。
EUのミシェル大統領が同日、X(旧ツイッター)への投稿で「交渉が成立した」と表明した。23年12月の首脳会議ではハンガリーの反対で決められなかった。今回は同国が最終的に譲歩したようで、加盟全27カ国が合意した。
ウクライナのゼレンスキー大統領はミシェル氏の投稿を受け、Xで「EUの結束の強さを改めて証明した」と歓迎した。支援について「長期的な経済や財政の安定性を強めるものであり、軍事支援や対ロ制裁に勝るとも劣らないくらい重要だ」とも強調した。
米国では議会の混乱が続き、ウクライナ支援が滞りつつある。欧州はかろうじて一致した対応を示せた形だ。
EUはこれまでも現行の基金からの拠出に加え、加盟国レベルも含め武器供与などの軍事支援を続けてきた。EU全体で中期的な援助を確約することで、域内外で持ち上がる「支援疲れ」への懸念を払拭する狙いもある。
EUは多年度の枠組みで財政を運営する。執行機関の欧州委員会は23年6月、ロシアのウクライナ侵攻など新たな危機に柔軟に対応すべきだとして、21〜27年の計画の修正案を提起した。
最大の柱はウクライナ支援で、同国への補助金や融資などあわせて500億ユーロの資金支援策を盛った。
権威主義的な政治姿勢をとるハンガリーのオルバン首相は、計画修正に強く反対していた。ウクライナ支援の必要性を認める一方、EUの予算外で助けるべきだと主張した。
中期予算の見直しは加盟国の全会一致で決めるルールがある。昨年12月の首脳会議では26カ国が賛成したものの、残るハンガリーが拒否権を行使して合意できなかった。1日の臨時首脳会議では、ハンガリーの同意を取り付けるための妥協案で折り合ったとみられる。
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