豊田自動織機、車エンジンも不正 トヨタ10車種出荷停止
豊田自動織機は29日、フォークリフト用エンジンの排ガス試験不正問題を巡り、新たに自動車用エンジン3機種でも不正が判明したと発表した。トヨタ自動車の「ランドクルーザー」などに搭載されており、トヨタは同日、対象となる10車種の出荷を一時停止する方針を明らかにした。
トヨタグループでは、日野自動車やダイハツ工業、系列自動車ディーラーなどでも不正が相次いでおり、グループ全体のコンプライアンス(法令順守)が問われている。
豊田織機は2023年3月、フォークリフト用エンジンで不正が発覚した後、外部有識者による特別調査委員会を立ち上げた。同委員会が29日、新たに発覚した不正内容や再発防止策に関する報告書を公表した。
トヨタが出荷を止めるのは「ハイエース」「ハイラックス」など世界で販売する10車種で、このうち国内向けが6車種を占める。年間生産台数は約43万台に上る。
豊田織機はトヨタから自動車用ディーゼルエンジンの開発を一部受託している。量産に必要な認証「型式指定」の申請手続きにおいて、豊田織機が出力試験での燃料噴射量を変更し、数値のばらつきを抑えるといった行為があった。
ディーゼルエンジン不正は17年ごろから21年ごろまで続けていた。独フォルクスワーゲン(VW)で15年に発覚した排ガス偽装事件「ディーゼルゲート」の後に不正をしていた。29日に記者会見した豊田織機の伊藤浩一社長は「他社の事例を捉え、自身を見直す機会とすることが残念ながらできなかった」と語った。
トヨタは出荷基準値を満たしているため、「ただちに使用を停止する必要はない」としている。
トヨタの佐藤恒治社長は29日、東京都内で報道陣の取材に対し「認証制度の根幹に対して大変重い出来事だ」と述べた。グループで相次ぐ不正について、組織の中で開発と認証の部署が分かれていなかったことが共通しているとし、「けん制力が効かずに不正に走ってしまった。組織上の課題へ手を打てていなかった」と話した。
フォークリフトなどの産業車両用エンジンでも新たに7機種、計11機種で不正が見つかった。特別調査委員会は「不正行為を行わなければ開発スケジュールを遵守できないとのプレッシャーがあった」と指摘した。
伊藤社長は「トヨタとのコミュニケーションが不足し、試験のプロセス、守るべき手順などの擦り合わせが十分に行われていなかった」と陳謝した。仕入れ先への部品発注分などについては補償する考えを示した。
国土交通省は29日、不正が確認されたエンジンについて同省が排ガス性能が環境面の基準を満たしているか確認するまで出荷を停止するよう指示した。
豊田織機は23年3月、フォークリフト用などのエンジン4機種について、耐久試験で実測値ではなく推定値を使ったり、試験中に部品を交換したりしていたと公表した。国交省に約7万2000台のリコール(回収・無償修理)を届け出ていた。23年3月期連結決算には、リコールや仕入れ先への補償費用として207億円を引き当てた。
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