SOMPO、桜田CEO退任発表「監督・執行に関与しない」
SOMPOホールディングスは26日、桜田謙悟会長兼グループ最高経営責任者(CEO、67)が3月末で退任すると発表した。特別顧問にも就かず、経営から完全に身を引く。傘下の損害保険ジャパンと自動車保険金の不正請求を繰り返していたビッグモーターとのゆがんだ取引関係は持ち株会社を含む経営陣の刷新に発展した。
奥村幹夫社長兼最高執行責任者(COO、58)が4月1日付で社長兼CEOとなる。損保ジャパンの白川儀一社長(53)は1月末で辞任し、石川耕治副社長(55)が2月1日付で昇格する。26日午前の指名委員会と取締役会で決めた。
桜田氏は同日の記者会見で「今回の事態を大変重く受け止めている。グループを代表して心よりおわび申し上げます」と陳謝。自ら辞任を申し出たと明らかにしたうえで「顧問や相談役のいずれにも就かず、SOMPOの監督と執行に関与しない」と強調した。「院政(を敷く)という話もあるようだが、今後の経営に影響力をおよぼすことはない」とも述べた。
ビッグモーターによる不正の疑いを把握しながら同社と取引の再開に踏み切った問題をめぐり、金融庁は25日、損保ジャパンとSOMPOに業務改善命令を出した。改善命令では、SOMPOが一連の経緯を把握したあとも「能動的なアクション(行動)が不足」し、親会社による経営管理が十分に機能していなかったと指摘された。
記者から引責辞任なのか問われると桜田氏は「皆さんの判断に任せたい」と明言を避けつつ「現時点のCEOとして私に一切の責任がないはずはなく、反論するつもりはない」と話した。
金融庁は問題の根底には、顧客の利益より自社の営業成績や利益に価値を置く企業文化があったとも厳しく批判した。桜田氏の後任となる奥村氏は「不退転の覚悟で企業風土の改革に取り組んでいく」と語った。損保ジャパンの社長に就く石川氏は人事や評価制度を改め、企業文化の変革を担う専門の部署を設ける意向を明らかにした。
持ち株会社のSOMPOはグループ全体に適切なガバナンス(企業統治)を効かせる立場にある。ビッグモーターとの取引を再開した一連の問題をめぐっては、重要な情報がSOMPOへ適切に報告されなかった意思疎通のあり方にも厳しい目が向けられている。
トップとしての在任が長くなり、物言いづらい雰囲気があったのではないかと問われた桜田氏は「(金融庁の改善命令で)あなたがいたからだと言われてビックリしたが、僕がいなくなることで物言える文化となるならそれに越したことはない」と述べた。SOMPOと損保ジャパンで兼務する役員を増やすなどし、経営管理のあり方を強化する方針も示した。
桜田氏は旧日本興亜損害保険と合併する前の2010年に旧損害保険ジャパンの社長に就任。グループの経営を約14年にわたってけん引してきた。経済同友会の代表幹事も19年4月から4年間務めた。
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中古車販売大手ビッグモーター(東京・港)が事故車の修理に伴う保険金を水増し請求し、過大に保険金を受け取っていたことが分かりました。外部弁護士がまとめた調査報告書によると、同社の従業員はゴルフボールを靴下に入れてふりまわすなど意図的に車両に傷をつけて損傷範囲を広げ、損害保険会社に過大な修理費を請求していました。兼重宏行社長らが辞任、国交省が聴取に乗りだすなど全貌解明がすすめられています。
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