政府税調会長に日本総研・翁百合氏 物価を上回る賃金に
政府税制調査会(首相の諮問機関)は25日、委員の互選で日本総合研究所の翁百合理事長を会長に選出した。2013年に就任した中里実氏から11年ぶりに交代する。翁氏は社会保障や金融システムが専門で、女性初の会長就任となる。
任期は27年1月まで3年間だ。物価高を上回る賃上げや少子化対策につながる税制について議論する。
岸田文雄首相は25日の会合で「税制を最大限活用することでデフレから完全脱却し、日本経済を新しいステージへと移行させなければならない」と述べた。経済成長と財政健全化の両立や、グローバル化やデジタル化などに対応する税制論議を諮問した。
翁会長は記者会見で「物価を上回る賃金を実現することが最大の課題。それに資する税制が短期的には重要だ」と強調した。「人口減少と少子高齢化が急速に進展するなか、中長期的に財政の持続可能性を損なわないことが非常に重要だ」とも指摘した。
政府税調は中長期の「あるべき税制」を示す役割を担う。石弘光税調会長体制下の03年には任期中の消費増税を否定していた小泉純一郎首相に「将来は2桁の税率に引き上げる必要もある」と答申するなどしたが、近年は影響力の低下が指摘される。
前会長の中里氏のもとで23年6月にまとめた中期答申は歳出に見合う税収を確保する「十分性」の重要さに触れたものの、消費増税などに踏み込んだ提言はなかった。
少子高齢化の進展で、世代や世帯によって利害が異なる課題が増えてきた。翁氏が率いる新体制には負担増も選択肢に入れた抜本的な税制改正論議が期待されている。
女性の社会進出やフリーランスの増加といった働き方や生き方の多様化に税制がどう対応すべきかも検討していく。翁氏は納税環境のデジタル化や、経済協力開発機構(OECD)などが進めてきた多国籍企業の課税逃れ対策も重要だとの認識を示した。
翁氏は専門分野である社会保障について「税と保険料を合わせて見ることが大事で、保険料の負担がどうなっているかを合わせて税を議論する必要がある」と語った。
そのうえで少子化対策に関し「どういうふうに若年層の負担を考えていくかも大事になる」と訴えた。膨らむ社会保障費については「支出をどう支えていくかも大きな課題だ」と指摘した。
消費増税の必要性について問われると「個別の税目に関する具体的な改正の方向性については会長の立場でのコメントは控える」と述べるにとどめた。
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