東北・上越・北陸新幹線、24日始発から再開計画
東北・上越・北陸新幹線は23日午前10時ごろ、停電が発生し運転を見合わせた。架線設備と新幹線のパンタグラフに損傷が確認され、JR東日本は一部区間の運転を終日取りやめると決めた。現場線路上では復旧にあたっていた作業員が感電し重傷を負う事故も発生。JR東や警察などが詳しい状況を調べている。
運転を取りやめたのは東北新幹線の東京―仙台間、上越新幹線の東京―高崎間、北陸新幹線の東京―高崎間のいずれも上下線。広範囲で長時間運休する異例の事態となり、3新幹線の利用者計約12万人に影響が出た。JR東は「大変多くの皆様に迷惑をかけ深くおわびする」(担当者)としている。
各新幹線の24日の運行についてJR東は23日午後9時時点で「始発から通常通りの運転を計画しているが、一部列車に運休が発生する」と説明した。
JR東によると架線トラブルはさいたま市中央区の埼京線北与野駅付近で起きた。新幹線に電気を送る架線は通常、支柱につられ約5メートルの高さに張られているが、約150メートルにわたり垂れ下がった。最も低いところでは線路近くまで下がっていた。
この現場を北陸新幹線「かがやき504号」(12両編成)が走行し、架線とパンタグラフの接触に異常が生じたとみられる。架線を固定する支柱の金具が複数損傷したほか、かがやき504号も3号車と7号車でパンタグラフの損傷が確認された。
10号車の窓ガラスにはひび割れも見つかった。損傷した部品が当たった可能性がある。架線が垂れ下がった原因についてJR東は「詳細は調査中」としている。
かがやき504号は乗客359人を線路に降ろし、線路脇の非常階段から地上に誘導した。JR東によると乗客のけがや体調不良の情報は入っていない。
埼玉県警などによると感電事故は同日午後2時40分ごろに起きた。復旧作業の準備中に協力会社の1人が感電し、全身やけどの重傷。救助しようとしたとみられるもう1人も両手にやけどを負った。
架線トラブルによる運転見合わせは過去にも起きている。復旧に時間がかかり、影響が大きくなることが多い。
東海道新幹線は2022年12月、愛知県内にある架線が切れ最大で約4時間運転を見合わせた。JR東海によると、車両に電力を供給する「トロリ線」を架線からつり下げるための金具が折れ、別のトロリ線と接触してショートしたとみられる。
東北新幹線では15年4月に架線が切れて停電し、約4時間半にわたって全線が不通となった。
新幹線は在来線よりも高い電圧の電気が架線やパンタグラフを通じて流れる。接触部分の設備は摩耗しやすく、綿密な点検が求められている。
日本大の綱島均教授(鉄道工学)は「電気を流す架線と受けるパンタグラフが正常に機能することが安全運行の生命線だ」と説明。「運行前の設備点検や送電システムに不備がなかったか確認し、トラブルの原因を明らかにする必要がある」と話す。
感電事故の発生については「復旧にあたり感電を防ぐための基本手順が守られていなかった可能性がある」とみる。「当時の対応が適切だったか検証し、再発防止を徹底してほしい」と求めた。
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