「食べログ」逆転勝訴、アルゴリズム変更は妥当 高裁判決
グルメサイト「食べログ」の評価が不当に下がり、売り上げが減少したとして、飲食チェーン店がサイト運営のカカクコムに損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が19日、東京高裁であった。木納敏和裁判長は飲食チェーン店側への賠償を命じた一審判決を取り消し、カカクコム側の逆転勝訴とした。
訴訟は飲食店の評価点を算出する「アルゴリズム」(計算手法)の妥当性が初めて争点になったとされる。高裁判決はアルゴリズム変更について、独占禁止法違反には当たらないと判断した。原告の焼き肉・韓国料理チェーン「韓流村」(東京・港)側は最高裁に上告する方針。
カカクコムは2019年5月にアルゴリズムを変更し、チェーン店と認定した飲食店の評価が下がった。食べログの有料の店舗会員だった韓流村は、変更によって運営する「KollaBo(コラボ)」21店舗の評価点(5点満点)が平均約0.2点下落し、客が減って損害が出たとして訴えた。
22年6月の一審・東京地裁判決はチェーン店であることを理由にしたアルゴリズムの変更を「計算できない不利益を与える行為」として独禁法違反に当たると認定。カカクコムに対し、韓流村に3840万円を賠償するよう命じた。
一方、19日の高裁判決はアルゴリズムの変更が韓流村にとって「不利な扱い」だったとしつつ、変更が実施された目的を検討。投稿者の口コミで生じる一般消費者の感覚とのズレや、手口が巧妙化する不正な口コミに対処するためだったとして「合理性がある」と妥当性を認めた。
高裁はカカクコムが「優越的な地位を利用して不利益な取引を実施した」と認定したが、「アルゴリズムの定期的な見直しや、それに伴い評価点が変動することはサイト上で公開されており、飲食店側も認識し得た」と指摘。独禁法違反が成立する「正常な商習慣に照らして不当な不利益」には当たらないと判断した。
食べログの掲載店舗数は約85万店、サイトの月間利用者数は約9000万人に上る。
原告の飲食チェーン社長「言葉にできないほど衝撃」
19日の控訴審判決で逆転敗訴を言い渡された原告の韓流村社長、任和彬氏は東京・霞が関で記者会見し「言葉にできない。非常に悲しく衝撃的な判決」と話した。自らの運営店舗と同様に多くのチェーン店の評点が不当に下げられたと主張し「判決は差別的運用を可能とするもので、健全な市場競争を著しく困難にする」と訴えた。
任社長は「プラットフォームの利用者は評点やランキングがユーザーの判断や意見によるものだと信じて参考にするはず。プラットフォーマーが店舗数によって評価を下げることが国民の利益に資するといえるのか」と疑問を呈した。
アルゴリズムの変更に伴う評価点の下落で運営店舗の多くが閉店に追い込まれたという。「閉店によって従業員と別れを告げなければならなかったことが、なによりつらかった」と涙を流した。「最高裁に上告して、最後まで正しい判決を求めて戦い続ける」と話した。
カカクコム「主張が正当と認められた」
カカクコムは控訴審判決を受け「当社の主張が正当だったことが認められたものと考えている。今後も『ユーザー本位』の立場から公平中立なサービスの提供に取り組んでいく」とするコメントを出した。
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