米英がフーシ拠点を攻撃 紅海の商船襲撃で報復
【ロンドン=江渕智弘、ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は11日、米英軍がイエメンの親イラン武装組織フーシの関連施設を攻撃したと発表した。紅海で相次ぐ商船襲撃への報復で、中東情勢が一段と緊迫する。
2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲後、米軍がフーシの拠点を攻撃するのは初めて。オーストラリアやバーレーン、カナダ、オランダが攻撃を支援した。
バイデン氏は声明で「標的を絞った攻撃を通じ、米国やパートナー国は人々に対する攻撃を容認せず、敵意を持つ者が世界で最も重要な航路の一つで航行の自由を妨害することを認めないという明確なメッセージを送った」と強調した。
スナク英首相は「英空軍が攻撃を実行した。フーシの軍事力を低下させ、世界の海運を守るため、限定的で必要かつ適切な自衛行動をとっている」とコメントした。
オースティン米国防長官は声明で、無人機や弾道ミサイル、巡航ミサイル、レーダー、空中監視能力に関わる施設を攻撃対象にしたと明かした。米紙ニューヨーク・タイムズは対象は10カ所以上にのぼると伝えた。
米軍高官は記者団に対し、フーシの戦力をどれほど弱体化させたかに関し「かなり大きい」と説明したが、詳細の説明は避けた。米軍が航空機と艦船、潜水艦から誘導弾を発射したと言及した。
米英豪やニュージーランド、韓国など10カ国は11日の共同声明に「きょうの措置は航行の自由や国際貿易などに対する我々の関与を行動で示した」と明記。米英軍の攻撃を支持した。
ロイター通信によるとフーシの指導者アブドルマリク・フーシ氏は11日、米国から攻撃を受ければ報復すると改めて表明した。中東情勢の緊張に拍車がかかる公算が大きい。
米空母ドワイト・アイゼンハワーの艦載機や米英の艦船は9日、フーシの無人機18機とミサイル3発を紅海上空で撃墜した。フーシの攻撃が止まらず、ブリンケン米国務長官は10日にバーレーンで記者団に対し「攻撃が続けば報いがある」と明言していた。
イスラエルとハマスの戦闘が23年10月に始まってから、フーシによる紅海での商船襲撃が活発になった。紅海は欧州とアジアをつなぐ海上輸送の要衝で、海上物流が混乱するほど世界経済のリスクが高まる。
バイデン政権は12月、紅海を通る商船を守るために「繁栄の守護者作戦」に着手した。国防総省によると、20カ国以上が参加している。
24年1月初め時点で米国と英国、フランスの艦船5隻が紅海で活動し、ギリシャとデンマークも艦船を派遣する計画だ。他国は情報収集や後方支援で協力しているとみられる。
林芳正官房長官は12日の記者会見で、米英両軍によるフーシへの攻撃について「船舶の自由かつ安全な航行を確保するために責任を果たそうとする米国など関係国の決意を支持する」と述べた。「これ以上の事態の悪化を防ぐための措置」との認識を示した。
「フーシ派がアラビア半島周辺海域での航行の権利や自由を妨害し続けていることを非難する」と話した。「米国をはじめとする関係国と緊密に連携し、航行の権利および自由の確保に日本が果たすべき役割をしっかりと果たして必要な対応をする」と強調した。
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(更新)
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