柏崎刈羽原発の運転禁止解除 規制委、テロ対策不備改善
原子力規制委員会は27日の定例会合で、東京電力ホールディングス(HD)の柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)に出している事実上の運転禁止命令を2年8カ月ぶりに解除した。テロ対策の不備が改善したと判断した。東電は再稼働に向けて地元同意を取り付ける必要がある。
柏崎刈羽原発では2021年にIDカードの不正使用や侵入検知に関する核物質防護の設備でのトラブルが相次いで発覚した。規制委は同年4月に核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出した。17年12月に6、7号機が安全審査に合格していたが、現在も運転できない状態が続く。
規制委の事務局の原子力規制庁は延べ4268時間に及ぶ追加検査で27項目の改善点を確認した。規制委の山中伸介委員長らは現地を訪れて取り組みの状況を確かめた。東電の小早川智明社長は20日の規制委の会合に出席して改善に努めた点などを説明した。
規制委は並行して東電の原発事業者としての適格性も再確認した。17年に原発を運転する技術的能力がないと判断する理由はないと評価していた。今回は11年に起こした福島第1原発事故を受けて同原発の廃炉に取り組む姿勢などを確認し、当時の判断を維持した。
規制委の決定を受けて東電は7号機の再稼働の準備を本格化する。使用前の検査は終盤に差し掛かっている。今後は原子炉を起動して蒸気で動く機器類などを検査する。同時に年明けから地元へ説明を本格化する。再稼働には地元の同意が必要だ。
新潟県の花角英世知事はこれまで明確な姿勢や判断時期の見通しを示していない。柏崎市と刈羽村の首長は容認姿勢をとるものの、他の周辺自治体には事故時の安全・防災対策で国の積極的な対応を求める声もある。
林芳正官房長官は27日の記者会見で「安全確保を大前提とし、再稼働に向けて柏崎刈羽原発の必要性や意義を、新潟県など立地自治体の理解と協力を得られるよう丁寧に説明したい」と強調した。
規制委は「東電に何かお墨つきを与えたということではないと肝に銘じてほしい」(山中委員長)との認識を示す。未曽有の原発事故を起こした東電には厳しい視線が注がれる。