辺野古「代執行」訴訟で国勝訴 高裁、沖縄県に承認命じる
米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を巡り、防衛省による地盤改良工事の申請を国が県に代わって承認する「代執行」に向けた訴訟で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)は20日、沖縄県に承認を命じる判決を言い渡した。国の主張を認め、判決文の送達を受けた翌日から休日を除く3日以内の承認を命じた。
【よくわかる 3つのポイント】
県は同日判決文を受け取った。期限は25日となる。県が承認しなければ国が地方自治法上の代執行に初めて踏み切り、工事に着手する見通しだ。県は1週間の期限内に最高裁に上告できるが、勝訴するまで代執行を止める効力はない。県側は工事を止める手立てを事実上失い、辺野古移設をめぐる国と沖縄の対立は大きな転換点を迎えた。
判決は、9月の最高裁判決で県が承認義務を負った後も承認しない対応については法令違反だとし、代執行以外の方法で是正することは困難だと指摘した。住宅地に隣接する普天間基地の危険性に触れ「申請に係る事務を放置することは社会公共の利益を侵害する」と判断した。
国側は10月の口頭弁論で「安全保障と普天間の固定化回避という重要課題に関わり、著しく公益が侵害される」と主張。県側は「沖縄県の自主性や自立性を侵害し、到底容認できない」と反論していた。
高裁判決を受け、沖縄県の玉城デニー知事は「県民の民意に即した判断を期待していただけに極めて残念だ」とのコメントを書面で出した。20日に「大葉性肺炎」の診断を受け、26日ごろまで知事公舎で療養するという。池田竹州副知事は県庁で記者団に「厳しい判決であるのは事実だ。25日の期限までにしっかり検討する」と語った。
林芳正官房長官は記者会見で「沖縄県で判決に沿った対応が速やかにされるべきだ」と述べた。市街地にある普天間基地の危険性に言及し「辺野古移設が唯一の解決策であるとの方針に基づいて着実に工事を進める」と強調した。
移設工事を巡っては最高裁が9月、設計変更を承認しなかった県に対する国の是正指示を「適法」とする判決を下し県の敗訴が確定した。国は地方自治法に基づく勧告や指示を出して承認を求めたが県側は応じず、10月に代執行訴訟を提起していた。
辺野古沿岸部の埋め立て海域は「辺野古側」と「大浦湾側」に分かれる。辺野古側は18年12月に埋め立てを始め、11月末時点で進捗率は99.5%に達した。大浦湾側は軟弱地盤の存在が明らかとなり、防衛省が20年4月に設計変更を申請したが県が承認せず工事を進められなくなった。
大浦湾側は辺野古側より埋め立て規模が大きく、工事全体で使う土砂量の8割超を投じる。軟弱地盤対策として7万本余りの杭(くい)を打ち込む改良工事を加える。防衛省は大浦湾側の工事開始から移設完了まで12年ほどかかると見積もる。移設は現時点で30年代半ば以降となる見込みだ。
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