景況感3期連続改善、中小もプラス圏浮上 12月日銀短観
日銀が13日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、3ポイント改善してプラス12だった。改善は3期連続。中小企業製造業は6ポイント改善のプラス1と4年9カ月ぶりにプラス圏に浮上した。価格転嫁の進展や自動車生産の回復を背景に、景気の回復基調を裏付ける結果となった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。12月調査の回答期間は11月9日〜12月12日。回答率は99.3%だった。
大企業製造業の業況判断DIはQUICKが事前に集計した民間予想の中心値(プラス10)を2ポイント上回った。原材料コスト高が一服し、自動車生産の回復が進んだ。自動車は13ポイント改善しプラス28となった。金属製品が17ポイント改善し0に、非鉄金属が15ポイント改善しプラス12だった。
大企業非製造業はプラス30と9月調査から3ポイント改善した。新型コロナウイルス感染症の影響緩和や価格転嫁の進展を背景に7期連続の改善で、1991年11月調査以来の高水準となった。9月調査でプラス44だった宿泊・飲食サービスはさらに改善しプラス51と04年の調査開始以来の最高を更新した。小売は2ポイント改善しプラス26に、対個人サービスも4ポイント改善のプラス28だった。
規模別では中小企業の改善幅も目立った。中小企業製造業の業況判断DIはプラス1と9月調査(マイナス5)から改善した。大企業製造業の伸び(3ポイント)を上回る強さで2019年3月調査以来4年9カ月ぶりのプラス圏を回復した。中小でも16ポイント改善し0となった紙・パルプなど幅広い業種で価格転嫁の進展が聞かれたという。中小企業非製造業もプラス14と2ポイント改善した。
先行きは海外経済の減速への不安などから、製造業、非製造業を問わず悪化予想となった。大企業製造業は4ポイント悪化、大企業非製造業では6ポイントの悪化を見込む。人手不足や人件費高騰を懸念する声も多く、宿泊・飲食サービスは先行きで12ポイントの大幅悪化を見込む。
価格転嫁の進展が全体の景況感を底上げしたとみられるが、値上げの勢いは一服感が出ている。販売価格が「上昇」から「下落」をひいた販売価格判断DIはいずれも低下。大企業製造業は6ポイント低下のプラス26だった。中小企業製造業は4ポイント低下のプラス26、非製造業は2ポイント低下しプラス25だった。
企業の物価見通しはおおむね不変だった。1年後は前年比2.4%、3年後に2.2%、5年後は2.1%と2%を超える上昇率が続く予想となった。調査時の水準と比較した際の販売価格の見通しも1年後は2.6%、3年後が3.7%、5年後に4.4%と上昇が続く期待感が維持されているようだ。
企業の事業計画の前提となる2023年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=139円35銭と9月調査の135円75銭から円安方向に修正された。
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