日産株、ルノーが一部売却 5%1200億円自社株買い
日産自動車は12日、仏ルノーが売却する日産株の一部を取得すると発表した。ルノーがフランスの信託会社に移していた28%分から、発行済み株式数(自己株式を除く)の5%分に当たる2億1100万株を買い付ける。自社株買いの規模は1200億円で、取得した株式は株主還元や資本効率向上を目指し、15日に全株消却する。
これまでルノーは日産に43%を出資する筆頭株主だった。約25年に及んだ資本関係の見直しで、11月にはルノーが日産への出資比率を15%に引き下げ、相互に15%ずつを出資する形になった。ルノーは保有する日産株のうち、28%をフランスの信託会社に移していた。
ルノーは契約上、信託する日産株を売却する際、日産の同意を得る必要があり、日産か同社が指定した第三者を優先的に売却先の候補とする必要があった。日産株が競合他社やファンドなどに渡るのを防ぐのが狙いだが、今回、日産が自ら買い取ったことには象徴的な意味がある。
日仏連合は1999年に経営危機に陥った日産の株式の37%をルノーが取得したことで始まった。規模では日産がルノーを上回りながら日産の資本の多くをルノーに握られる構図は時に両者の提携関係を動揺させる悩みの種だった。19年にはフランス政府の意向を受けて経営統合を提案したルノーに対し、日産が反発して白紙撤回となるなど両社の関係や経営が混乱した。対等な資本関係は日産の悲願だった。
日産は資本関係の見直しで経営の自由度が高まる。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は資本関係見直し完了に伴い、「電動化をはじめとする事業戦略を支える取り組みで、新たな成長機会を追求することが可能になる」とコメントを発表していた。主力の中国立て直しに加え、欧米での投資戦略を優位に進めやすくする。
一方、ルノーはロシア撤退などで一時業績が大幅に悪化し、コスト削減や事業体制の見直しを進めてきた。EV事業を手掛ける新会社「アンペア」は24年前半に上場させることを目指すが、新規株式公開(IPO)環境の悪化で上場時期は遅れる見通しだ。
今回、ルノー側が日産株を売却した背景には、当面の現金確保を急ぐ狙いもあったとみられる。ルノーのジャンドミニク・スナール会長は6日のアライアンスに関する記者会見で、日産株の売却について「協議しながら適切なタイミングで決定する」と話していた。
マークラインズなどによると、世界の自動車販売ランキングでルノー・日産・三菱自動車アライアンスは22年時点で4位だが、単独では23年1〜9月の世界販売で日産は8位、ルノーは14位に後退する。
ただ、単独で勝ち抜くことが難しいのは日産もルノーも同じだ。両社の独立性が強まる中で、アライアンスで得られる利点をどう活用していくのか。そのかじ取りが生き残りのカギとなる。