EU、AI包括規制案で大筋合意 対応怠れば巨額制裁金
【ブリュッセル=辻隆史】欧州連合(EU)の主要機関は9日、人工知能(AI)の包括的な規制案に大筋合意したと発表した。生成AIの提供企業に、AIでつくられた内容であることを明示させるなど透明性の義務を課す。開発側、利用側の双方が果たす責務を法律で明確に定め、世界標準のルールとして定着を狙う。
対応を怠った企業には、最も重い違反の場合「3500万ユーロ(約54億円)」か「年間世界売上高の7%」を上限に制裁金を科す。欧州委員会に「AIオフィス」と呼ぶ監督・執行機関を設け、リスクが高いと判断したAIには域内全体で厳格な法律適用を図る。
加盟国の代表からなる閣僚理事会と、立法機関の欧州議会で政治合意した。両機関による最終承認を経て施行し、2026年ごろからの適用開始を見込む。適用までの経過措置として、関連企業には規制案に近い自主ルールの順守を求める。
規制案では、AIのリスクを①容認できない②高い③限定的④最小限――の4段階に分け、段階ごとに義務を課す。例えば、子どもや障害者の弱みにつけ込むようなAIは認めない。
教育や企業の採用活動での利用は高リスクとみなし、リスク管理の仕組みの導入を義務付ける。市場投入前にはEU加盟国の管轄当局が事前評価する。
日本の企業がEU域内の拠点を含めてAIで採用情報を収集・管理している場合なども「高リスク」とみなされ、対応が必要になる可能性がある。
「Chat(チャット)GPT」など生成AIを手がける企業に対し、AIに外部の情報を読み込ませて訓練する手順について、文書での開示を求める。業務と関係ない個人のAI利用は規制の対象外とする。
法案には生成AIなどに加え、あらゆる課題を人間以上の能力でこなすと見込まれる「汎用AI」に関する義務も明記した。問題が起きたときに社会的影響が大きい汎用AIにはより厳しいルールを課す。サイバーセキュリティーの確保だけでなく、利用時のエネルギー効率の報告など環境面でも企業に対応を迫る。
AI規制は21年に執行機関の欧州委員会が導入を提案し、主要機関が協議を続けてきた。今回の合意で大枠が固まり、今後は細部を詰める。
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文章や画像を自動作成する生成AIに注目が高まっています。ChatGPTなど対話型AIやMidjourneyなど画像生成AIがあります。急速な拡大を背景に、国際的な規制や著作権に関わるルールなどの策定が急がれています。