8人乗り米軍オスプレイ「墜落」 1人死亡、捜索続く
海上保安庁によると、29日午後2時45分ごろ、鹿児島県の屋久島沖で「オスプレイが墜落した」と118番通報があった。米軍横田基地所属のCV22オスプレイで、8人が搭乗していた。乗員とみられる男性1人が死亡し、沿岸から東に約1キロの海上で機体の残骸のようなものが多数見つかった。海保などが現場海域の捜索を続けている。
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輸送機のオスプレイは速度や搭載重量などの能力が優れる一方、事故やトラブルも相次いでいる。防衛省関係者によると、オスプレイによる国内の死亡事故は初めて。関係する自治体からは飛行停止を求める声が上がった。
海保によると、捜索に協力した漁船が屋久島の沖合およそ3キロの海上で乗員とみられる男性1人を発見したが、29日午後5時すぎに死亡が確認された。外国人とみられ、迷彩柄の服を着ていた。付近に無人の救命ボートもあった。
第10管区海上保安本部が巡視船などを派遣し、現場周辺を調べている。自衛隊も情報収集と現場での捜索活動を始めた。
海保や防衛省などによると、オスプレイは山口県の米軍岩国基地から沖縄県の嘉手納基地まで飛行する予定だった。屋久島空港に「緊急着陸したい」という通報があり、午後2時40分ごろにレーダーから機影が消えた。
海保は29日、米軍からの情報として乗員が6人だったと発表したが、30日に8人に訂正した。
鹿児島県によると、オスプレイが左エンジンから火を噴きながら降下したとの目撃情報が県警に寄せられたという。詳しい経緯の調査は米軍主体で進むとみられる。
宮沢博行防衛副大臣は記者団に、パイロットが最後まで機体の制御を続けていたという米側の説明を理由に、墜落ではなく「不時着水した」との認識を示した。
気象庁によると、屋久島周辺はおおむね晴れており、29日午後2時半時点の風速は1.9メートルと弱い状況だった。
今回の事故を受け、陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)は29日、予定していた30日の陸自輸送機V22オスプレイの飛行訓練見合わせを決めた。29日に県内で初めてとなる飛行訓練をしたばかりだった。
トラブルや事故、国内外で続発
オスプレイを巡っては国内外で事故やトラブルが続発し、海外で死亡事故も相次いでいる。2022年6月に米カリフォルニア州で米軍のオスプレイが墜落し、5人が死亡した。23年8月にもオーストラリアで3人が死亡する墜落事故があった。
国内では16年12月、米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の所属機が同県名護市沿岸部で大破し、搭乗員2人が負傷した。米政府は夜間に空中給油訓練をしていたパイロットの操縦ミスだったとする最終報告書をまとめた。
民間空港への緊急着陸も頻発している。23年9月14日、鹿児島県の奄美空港、沖縄県の新石垣空港に米海兵隊機が緊急着陸。同16日には大分空港、同21日に奄美空港に緊急着陸した。
オスプレイは固定翼機とヘリコプターの性能を兼ね備えた輸送機。主翼の両端にあるプロペラを上に向けると、ヘリのように垂直に離着陸が可能になる。前に傾けると、固定翼機のように高速で飛行できる。
開発段階から墜落事故が相次ぎ、安全性を懸念する声があった。
米軍は海兵隊が普天間基地にMV22オスプレイ、空軍が東京都の横田基地にCV22オスプレイを配備。陸上自衛隊は千葉県の木更津駐屯地に暫定配備している。
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