経済対策、事業規模37.4兆円 政府が閣議決定
政府は2日午後の臨時閣議で賃上げ・国内投資の促進を盛り込んだ総合経済対策を決めた。物価高対策として所得税と住民税の減税や低所得者向け給付を入れた。国と地方自治体、民間投資をあわせた事業規模は37.4兆円程度、減税と裏付けとなる補正予算を含め17兆円台前半になる。
財源の裏付けとなる2023年度補正予算案の一般会計は13.1兆円ほどを計上する。11月中にも提出し、臨時国会中の成立をめざす。
岸田文雄首相は臨時閣議に先立つ政府与党政策懇談会で「賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化する供給力の強化を経済対策の最も重要な柱とした」と語った。
所得税減税などの還元策にも触れた。「賃金上昇が物価高に追いついていない現状でデフレに後戻りしないための一時的な措置として国民の可処分所得を下支えすることも必要だ」と指摘した。
物価高対策は24年6月にも所得税3万円、住民税1万円を減税する。22年度までの2年間で所得税・住民税で収入が3.5兆円増えた分の還元と位置づけた。
住民税の非課税世帯には1世帯につき7万円を給付する。3月に決めた物価高対策の3万円の給付と合わせて10万円分の負担減となる。
住民税は納めている一方で所得税は非課税だったり、納税額が4万円未満で減税の恩恵を受けきれなかったりする「隙間」の所得層がいる。この層への対応策なども含めて5兆円規模の対策となった。
ガソリンの価格上昇を抑える補助や電気・ガスの料金を差し引く措置は24年4月末まで継続する。
従業員の賃金を引き上げた企業への税優遇や補助金を拡充する。個人がリスキリング(学び直し)に取り組みやすくするため「教育訓練給付」を一部の分野で補助を増やす。
年収が一定額を超えると社会保険料の支払いが生じて手取りが減る「年収の壁」への対策に向けた支援も新設する。
半導体や電池などの戦略物資の国内投資を後押ししたり、特許の取得を促したりするための税制優遇措置を書き込んだ。企業や大学による宇宙関連の技術開発を複数年度にわたって支える10年間の基金も設ける。
物価高対策と並行して成長促進のための施策を入れた。首相は今国会の所信表明演説で「コストカット型経済からの完全脱却に向けて思い切った供給力の強化を3年程度の変革期間を視野に入れて集中的に講じる」と唱えた。
経済対策の財源には当初予算で計上した予備費の一部も充てる。新型コロナウイルスや物価高騰への対策として4兆円、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う経済情勢の悪化に備えて1兆円をそれぞれ計上し、全額が残っている。
新型コロナ対策で膨らんだ近年の補正予算を比べると規模は縮小する。21年度の経済対策は一般会計で31.6兆円、22年度は29.1兆円だった。
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