10月の円急騰、為替介入実績なし 財務省が公表
財務省は31日、政府・日銀による9月28日〜10月27日の為替介入実績がゼロだったと発表した。為替市場では10月3日に一時1ドル=150円台まで下落し、その直後に147円台まで円高が進んだため、政府・日銀が介入に踏み切ったとの観測が流れていた。
財務省の神田真人財務官は3日に円が急騰した翌4日、為替介入の有無について「コメントを控える」と話していた。26日も1ドル=150円台後半まで下げた後に急速に円が買われ、149円台後半まで円高が進む場面があった。
かねて財務省は「水準そのものが判断基準にはならない。あくまでボラティリティー(変動率)の問題だ」(鈴木俊一財務相)と、過度な値動きかどうかを見極めて為替介入の是非を判断する姿勢を見せてきた。
3日の円の急騰はコンピューター分析で売買のタイミングを判断する「アルゴリズム取引」が影響したとの指摘が市場では広がっている。ある市場関係者は「介入による円高進行を収益機会として狙っていたヘッジファンドのアルゴリズムが作動した」と話す。
円買い介入をすると一般的に円は急騰する。150円台に達した段階でいったん利益を確定しようとした大口のドル売りの取引が発生。円高方向への値動きが発生すると円を買うようなアルゴリズム取引が「介入があった」と勘違いして円を買う動きが瞬時に広がったとの見方がある。
国内外の大手金融機関などが決済で使う多通貨同時決済(CLS)銀行によると、3日の午後11時〜4日午前0時のドル・円の取引額は376億ドル(約5.6兆円)に急増。直前の90日間平均の約5倍に膨らんだ。アルゴリズムによる取引は数秒の間に高速で取引を繰り返すものも多く、取引量を大きく押し上げたとみられる。
今回1ドル=150円台でも政府・日銀が介入しなかったことが判明し、市場の警戒感が緩み円安が進む可能性がある。
政府・日銀は急激な円安・ドル高を抑えるため22年9〜10月に円買い・ドル売りの為替介入を実施した。円相場が円高に振れた同年11月以降は実施していない。
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