日銀、金利操作の再修正を決定 長期金利1%超え容認
日銀は31日に開いた金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正を決めた。10年物国債の指し値オペ(公開市場操作)の運用を見直し、長期金利の事実上の上限だった1%を「めど」とし、一定程度超えることを容認する。政策運営を柔軟化することで市場機能の低下を避ける狙いがある。
マイナス金利政策や上場投資信託(ETF)買い入れといった大規模な金融緩和策の大枠は維持した。修正措置は31日から運用する。植田和男総裁は31日午後に記者会見し、決定内容を説明する。
日銀はこれまで0.5%程度を長期金利の上限の「めど」としたうえで、国債を無制限に買い入れる指し値オペで金利を1%以下に抑え込んできた。今回、上限のめどを0.5%程度から1%に引き上げた。指し値オペは従来のように毎営業日実施して厳格に金利を抑え込むのではなく、「金利の実勢等を踏まえて適宜決定する」とした。長期金利が1%を一定程度上回ることを容認する。
日銀は2022年12月に市場機能の改善を目的に、長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度に拡大。7月に「めど」に変えた上で、大量の国債購入で金利を強制的におさえ込む事実上の上限を1%に引き上げた。7月の政策修正からわずか3カ月で次の一手を繰り出すことになった。
日銀が修正に踏み切ったのは、長期金利が日銀の想定を上回るペースで上昇してきたためだ。指標となる新発10年物国債利回りは31日に一時0.955%と13年5月以来の高水準に上昇。「念のための上限」(植田総裁)の1%に迫っていた。
今回の修正は長期金利が上昇しても日銀の国債購入が過度に膨らまないようにする狙いがある。日銀の国債大量購入は金融市場のゆがみを膨らますことにつながるためだ。日銀は公表文で今回の修正理由を「長期金利の上限を厳格に抑えることは強力な効果の半面、副作用も大きくなりうる」と説明した。
ただ金利が日銀の想定を超えて上昇し、結果として大量の国債買い入れを迫られるリスクは残る。決定会合では修正案に「企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」として中村豊明審議委員が反対票を投じた。
物価高も長期化している。31日公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の23年度の前年度比上昇率の見通しを2.8%、24年度は2.8%と7月時点からいずれも引き上げた。25年度は1.7%だった。22年度から3年連続で3%前後の水準となった。前回7月の見通しではそれぞれ2.5%、1.9%、1.6%だった。
外国為替市場では10月に入って、円が1ドル=150円台をつけるなど円安基調が続いていた。円安は輸入物価の上昇を通じて物価高を助長する側面がある。
日銀は公表文で2%の物価安定目標に向け「消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていく」とした上で「粘り強く金融緩和を継続することで経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく」と記載した。今後は賃上げや物価動向を見極め、マイナス金利解除といった金融正常化のタイミングを慎重に探ることになる。
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