中国GDP4.9%増 7~9月実質、不動産落ち込み拡大
【北京=川手伊織】中国国家統計局が18日発表した2023年7〜9月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比4.9%増えた。昨春に上海がロックダウン(都市封鎖)した反動が出た4〜6月の6.3%増からは伸びが鈍った。生産に持ち直しの兆しが見える一方、不動産市場の落ち込みは拡大した。
7〜9月の前年同期比増加率は、日本経済新聞社と日経QUICKニュースが調べた市場予想の平均(4.4%)を上回った。
季節要因をならした前期比の増加率は1.3%と、4〜6月(0.5%)から拡大した。先進国のように前期比の伸び率を年率換算した成長率は5.3%程度となる。生活実感に近い名目GDPは前年同期から3.5%伸びた。4〜6月の増加率は4.8%だった。
18日はGDPと同時に他の統計も公表した。
1〜9月の工業生産は4.0%増えた。1〜6月(3.8%増)に比べて伸びが加速した。在庫調整が進んだ分、工場の稼働率が高まった。9月の製造業購買担当者景気指数(PMI)をみると、自動車や電気機械で新規受注が増え生産が堅調だった。
百貨店、スーパーの売り上げやインターネット販売を合計した1〜9月の社会消費品小売総額(小売売上高)は前年同期比6.8%増加した。上海封鎖の影響がなくなったことも重なり、1〜6月(8.2%増)から伸びは縮まった。
工場の建設などを示す1〜9月の固定資産投資は前年同期より3.1%多かった。1〜6月の3.8%増から鈍化した。収益改善が遅れ先行き不安が強い民間企業の投資が0.6%減少した。
不動産市場の低迷は長期化している。1〜9月の開発投資は9.1%減った。減少率は1〜6月の7.9%から一段と大きくなった。新築住宅の販売面積も6.3%落ち込み、マイナス幅が広がった。在庫の消化に時間がかかり、新たなマンション開発が増えるまでには時間がかかりそうだ。
海外との貿易では輸出の落ち込みが目立っている。7〜9月はドルベースで前年同期を10%下回った。内需不振で輸入も減少したが、輸出の落ち込みが大きく、輸出から輸入を差し引いた貿易黒字は13%減った。3期ぶりのマイナスとなった。
1〜9月の実質GDPは5.2%増えた。政府が「5%前後」と掲げた23年通年の成長目標を上回った。ただ民間企業の収益や雇用の改善が遅れ、先行き不安は根強い。国際通貨基金(IMF)は10日に公表した経済見通しで、中国の24年の成長率を4.2%と予測した。前回7月の見通しから0.3ポイント引き下げた。中国経済への慎重な見方は多い。
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