旧統一教会解散命令、13日にも請求 文科相「損害甚大」
政府は12日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を13日にも東京地裁に請求することを決めた。かねて問題視されていた高額寄付を教団による組織的な違法行為と結論付けた。刑事事件を起こしていない宗教法人の解散が司法の場で審理されるのは初めて。教団側は全面的に争う姿勢で、結論までは長期化が予想される。
2022年7月に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件後、寄付の被害が注目された教団の存続を巡る議論は最大の節目を迎える。政府は民事の違法行為でも「組織性、悪質性、継続性」の3要件を満たせば厳格に対応する姿勢を明確にした。
政府は11カ月に及んだ調査で、高額寄付の被害が宗教法人の業務として行われ、全国約1550人(約204億円)の被害が1980年以降、最近まで及んでいたことを確認。5000点の証拠を積み上げ、行為が3要件を満たすと判断した。
盛山正仁文部科学相は記者会見し「財産目的で多くの人に多額の損害を生じさせた。宗教法人の目的を著しく逸脱する」と請求の理由を説明した。刑事事件が確認されない宗教法人も、同様の法令違反行為があれば手続きを踏んだ上で請求の対象となる可能性がある。
宗教法人法は「法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあった場合、裁判所が解散を命令できると定める。過去、法令違反を理由に解散命令が出たオウム真理教など2例は、いずれも幹部らの刑事手続きが進んでいた。
旧統一教会は刑事事件がない中で、政府が先行して宗教法人を調査し、解散命令の是非を司法判断に委ねる初のケースとなる。
政府は2022年10月、旧統一教会を念頭に、民法上の不法行為も3要件を満たせば解散命令請求できるとの新たな解釈を示した。それに基づき、所管する文化庁宗務課は同11月、宗教法人法上の「質問権」を初めて行使。並行して170人超の被害者らに聞き取りを進めた。
日本経済新聞社が22年10月に実施した世論調査で「請求すべきだ」と答えた人は78%に上ったが、政府は「法律に照らして判断した上で手続きを進めていく」(岸田文雄首相)と慎重な立場を維持してきた。
宗教関係者らの意見を聞くなど手続きの正当性も担保。12日も請求に必須でない宗教法人審議会(文科相の諮問機関)を開き、全会一致で請求が相当との意見を得た。
今後の審理は東京地裁が非公開で進める。地裁の決定内容に不服があれば高裁や最高裁で争われる。過去2件は最高裁まで争われ、オウム真理教は解散請求から確定まで7カ月、幹部が詐欺事件を起こした明覚寺(和歌山県)は3年を要した。旧統一教会を巡る判断も年単位で時間がかかるとの見方がある。
裁判所の解散命令が確定すれば、教団の法人格は剝奪され、活動は大きく制限される。選任された清算人が清算手続きを進め、税制上の優遇措置もなくなるが、任意団体としては活動できる。オウム真理教は解散命令確定後、後継の「アレフ」などが任意団体として活動を続けている。
政府は調査と並行し、いわゆる「霊感商法」や高額寄付に関する被害救済を急いだ。信者を親に持つ「宗教2世」の存在を念頭に、23年1月に不当寄付勧誘防止法を施行。同法は法人や団体による寄付勧誘を禁止したが、自ら信じて寄付した場合は対象にならないなど予防や救済の実効性がなお課題とされている。
旧統一教会「極めて残念」、争う構え
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は12日、政府が示した解散命令請求の方針について「極めて残念で遺憾。偏った情報に基づいて政府がこのような重大な決断を下したことは痛恨の極み」とコメントを発表した。
「今後は裁判において法的な主張を行っていく」として司法の場で争う構えを示した。
「2009年のコンプライアンス宣言以降、改革に積極的に取り組んできた」と活動の正当性を強調。「解散命令を受けるような教団ではないと確信している」と主張した。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、文部科学省は東京地裁に解散命令を請求しました。安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに高額献金などの問題が改めて注目され、文化庁は2022年11月から宗教法人法に基づく質問権を7回行使。170人を超える被害者らへの聞き取りも進め、解散命令請求の要件を満たすと結論づけました。教団側は全面的に争う方針を示しており、司法判断の確定には長期を要するとみられます。