エクソン、米シェール大手を8.8兆円で買収合意
【ヒューストン=花房良祐】石油メジャーの米エクソンモービルは11日、米シェール大手のパイオニア・ナチュラル・リソーシズを買収すると発表した。買収額は約595億ドル(約8兆8000億円)。新型コロナウイルス禍からの経済再開後、化石燃料の収益力が高まっており、シェールの事業基盤を再構築する。
エクソンは株式交換でパイオニア株をすべて取得し、24年前半の買収完了を目指す。パイオニアの株主は1株あたり約2.3株のエクソン株を受け取る。1999年にエクソンとモービルが合併して以来、同社にとって最大の買収となる。
パイオニアはスコット・シェフィールド氏が1997年に創業し、米国のシェール革命をリードしてきた。テキサス州西部のシェール鉱区「パーミアン盆地」で有数の生産量を誇り、日量60万バレル(原油換算)以上の石油・天然ガスを生産する。
買収によりエクソンの石油・天然ガスの生産量は2割程度多い日量約450万バレル(原油換算)となる。パーミアンは米国のなかでもシェール生産が好調な地域で、生産コストは低い。シェブロンなど他の石油メジャーも生産を増やしている。
世界最大の民間石油会社のエクソンは、欧州の石油メジャーに比べて太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーへの投資に慎重で、米国のシェールや南米の海底油田、世界各地の液化天然ガス(LNG)プロジェクトに積極的に投資してきた。再生エネより収益率が高い化石燃料への投資を当面続ける方針だ。
22年のロシアのウクライナ侵攻を契機に、世界各地でエネルギー安全保障の重要性が再認識されている。加えて新型コロナ禍からの経済回復で、原油相場に上昇圧力がかかりやすくなり、各社の化石燃料の上流事業は大きな収益をあげている。
このため、再生エネに積極的だった欧州の石油メジャーの間では事業戦略を見直す動きが浮上している。英シェルは再生エネの投資拡大にブレーキをかけて、LNGの生産を強化する方針を掲げた。
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