三菱商事系、クラウド乗り換え制限か 公取委立ち入り
建設業界向けにインターネット上で作業員の情報を管理するクラウドサービスを巡り、他社サービスへの乗り換えを制限した疑いが強まったとして、公正取引委員会は11日、三菱商事子会社のMCデータプラス(東京・渋谷)を独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いで立ち入り検査した。関係者への取材で分かった。
公取委がクラウドサービス分野に関する業務を対象に立ち入り検査するのは初めて。公取委はMC社が設けていた利用者向けの規約などがクラウドサービスの提供事業者の間の公正な競争を阻害した可能性があるとみているもようだ。
MC社は工事現場の作業員の名前や職歴、連絡先といった情報をクラウド上で管理し、労務安全書類の作成や保存が簡単にできるサービス「グリーンサイト」などをゼネコンなどの建設会社向けに提供している。
関係者によると、MC社は遅くとも2019年から、クラウドに蓄積された作業員のデータを他社のサービスで利用するのを利用約款で禁止していた疑いがある。
一部のデータをダウンロードし、他社サービスへの乗り換えを検討したゼネコン企業に対し、「個人情報の保護などの観点で問題がある」などとして注意喚起のメールを送り、サービスの利用停止を示唆していた疑いもあるという。
独禁法は不当に競合他社と取引しないことを条件に顧客と取引する行為を「排他条件付き取引」や「拘束条件付き取引」として禁じている。違反した場合は再発防止などを命じる排除措置命令の対象となる。
三菱商事は01年から建設業向けのITサービスを手掛け、15年にMC社を設立し、事業を分離した。三菱商事は「MCデータプラスが公正取引委員会の立ち入り検査を受けたことは事実。調査に全面協力する」としている。
MC社のホームページなどによると、同社のクラウドサービスは23年3月末時点で9万5000社以上が契約している。建設業向けに労務安全書類の作成などを支援するクラウドサービス事業で約7割のシェアを持つ最大手。23年3月期の売上高は48億7800万円だった。