ハマスがロケット弾数千発 イスラエル首相「戦争状態」
【イスタンブール=木寺もも子】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは7日朝(日本時間同日正午ごろ)、イスラエルに対して多数のロケット弾を発射し、戦闘員を侵入させた。同国軍はガザへの空爆など報復に着手、ネタニヤフ首相は「戦争状態にあり、勝利する」と述べた。
イスラエルメディアによると、南部や中部の約20カ所で戦闘が続いている。7日夕方までに100人以上が死亡、900人以上が負傷した。ハマスの司令官は声明で、作戦開始からの20分間で5000発のロケット弾を打ち込んだと主張した。イスラエル側は2000発以上としている。中部テルアビブなど広い範囲が標的となった。
戦闘員の侵入、ロケット弾発射の規模ともに異例の事態。イスラエル当局によると、戦闘員は陸・海・空から侵入した。SNSでは戦闘員がパラグライダーで飛ぶ様子や、ろ獲されたイスラエル軍戦車の動画などが拡散されている。
イスラエル軍は、市民らが人質としてガザに連れ去られたと認めた。ハマス幹部は中東の衛星放送局アルジャズィーラに対し、人質にはイスラエル軍上級将校も含まれると主張した。
パレスチナ側によると、イスラエルの反撃でガザでは198人が死亡、1600人以上が負傷した。
イスラエルは臨戦態勢を宣言し、予備役の招集を決めた。ネタニヤフ氏は動画メッセージを公開し「敵はこれまで知らなかったような代償を支払うことになる」と報復姿勢を強調した。
ガラント国防相はハマスの行動について「重大な過ちを犯した。イスラエル軍は全ての侵入地点で敵と戦っている」と説明した。イスラエルでは7日はユダヤ教の連休中だった。奇襲を許したことで、情報機関など政府の責任論も浮上しそうだ。
イスラエルは近年、パレスチナ問題を巡って対立していた周辺アラブ諸国との関係改善を進めていた。2020年にアラブ首長国連邦(UAE)などと国交を正常化し、地域大国サウジアラビアとも交渉している。パレスチナ側には取り残されているとの焦りがある。
ハマスの司令官は声明で、エルサレムのイスラム教聖地にある「アルアクサ・モスク」をイスラエルの入植者が「冒瀆(ぼうとく)した」と非難した。10月に入り、イスラエル側の延べ数千人がモスクに侵入したと報じられている。同モスクのある「神殿の丘」はユダヤ教の聖地でもあり、たびたび争いになっている。
「銃を取れ。今がその時だ」などとも述べ、アラブ人やイスラム教徒に呼びかけた。イスラエルと対立する過激派「イスラム聖戦」はハマスとの共闘を表明した。
在日イスラエル大使館は7日、同国のバルカト経済産業相が予定していた来日を取りやめたと明らかにした。
欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表はX(旧ツイッター)で「ハマスの攻撃を明確に非難する。恐ろしい暴力を直ちに止めなければならない」と強調した。
米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官は「イスラエルの市民に対するハマスの攻撃を非難する」とした。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)がイスラエルの国家安全保障顧問と連絡を取っていることも明らかにした。
ハマスとは
1987年、パレスチナ住民の反イスラエル闘争(インティファーダ)が広がった際に結成されたイスラム武装組織。イスラエルとの和平に反対し、同国に対する武力攻撃を繰り返している。欧米ではテロ組織に認定されている。
2006年にはパレスチナ評議会選で勝利し、その後ガザを武力制圧。実効支配している。ガザはイスラエルが設置した壁やフェンスに囲まれており、移動の自由がないことから「天井のない監獄」と呼ばれている。福岡市をやや上回る程度の広さに約200万人が暮らしている。
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(更新)
パレスチナのイスラム組織ハマスが2023年10月7日、ロケット弾や戦闘員の侵入によってイスラエルへの大規模な攻撃を仕掛け、イスラエルが報復を開始しました。最新ニュースと解説記事をまとめました。