「辺野古」代執行へ国が提訴 沖縄知事「承認困難」受け
米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を巡り、斉藤鉄夫国土交通相は5日、玉城デニー知事に防衛省の設計変更申請の承認を求める代執行訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。国が勝訴すれば、工事を進めることができる。
辺野古移設を巡る代執行訴訟は和解で終結した2015年に続き2回目。国と県の対立は再び法廷で争われる事態となった。玉城氏は5日、県庁で記者団に「訴状の内容をよく確認してから、どのような対応を取るか検討したい」と述べた。
地方自治法は代執行訴訟の初弁論について、提訴から15日以内に行うよう定めている。迅速性を重視するためで、高裁は国と県双方の主張を聞き、国の主張が正当と認めれば県に対して一定期限内に承認するよう命じる。県が応じなければ、国は代執行できる。
設計変更を巡っては9月4日の最高裁判決が、承認しなかった県に対する国の是正指示を「適法」と判断。県の敗訴が確定し、防衛省による地盤改良工事の申請を承認する法的義務が生じた。判決後、国は承認するよう「勧告」したが、県が応じなかったことから、より強い「指示」を出した。
指示の回答期限を迎えた10月4日、玉城氏は「期限までの承認は困難」と表明。最高裁判決の精査などが必要だと理由を説明した。国交省は現状が続けば「公益を害する」とみて、代執行訴訟に踏み切った。
総務省によると、地方自治法に基づく代執行訴訟は過去、辺野古移設に反対する翁長雄志知事(当時)による埋め立て承認取り消しの撤回を求めて1回だけ行われた。国は15年11月に提訴し、最終的に和解が成立した。国は工事を一時中断し、最終的に県も承認の取り消しを撤回した。その後も国と県は法廷闘争を繰り広げてきた。
辺野古沿岸部の埋め立て工事の海域は主に「辺野古側」と「大浦湾側」に分かれている。18年以降、辺野古側を中心に工事が進んだが、軟弱地盤が発覚した大浦湾側はいまだに土砂の投入が始まっていない。
辺野古移設は06年に日米で最終合意し、13年時点では22年度の完成を目指していた。防衛省は大浦湾側の工事完了は埋め立ての開始から12年を要するとみている。代執行訴訟で国の主張が認められ、手続きが進んだとしても辺野古移設は30年代半ば以降にずれ込む見通しだ。