長崎・対馬市長、核ごみ処分場の文献調査「受け入れず」
長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は27日、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定の前提となる「文献調査」について、調査を受け入れない考えを表明した。比田勝市長は同日午前10時に開会した市議会本会議で、現段階では「安全であるという市民の理解を得るのは難しい」と述べた。
同市議会は12日の本会議で、文献調査を受け入れるよう求めた市民からの請願について賛成10、反対8で採択していた。比田勝市長は市議会の決定と異なる判断を下した理由について①市民の合意形成が不十分だ②風評被害が懸念される――などを挙げた。
文献調査は最終処分場の選定作業の第1段階にあたる。2年間で最大20億円の交付金が国から出る。地質図や学術論文などの文献・データを調べ、対象の自治体が適地かどうか机上で探る。これまで北海道寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村の2自治体が原子力発電環境整備機構(NUMO)による文献調査を受け入れている。
市議会に対してはこれまで、調査受け入れを促す請願だけでなく、水産業者や市民団体からは反対の請願が多数出ていた。これらは市議会では採択されなかったものの、8月以降、市内で受け入れ反対の声が急速に高まっていた。
9月初旬に比田勝市長に文献調査を受け入れないよう求める要望書を提出した「対馬市漁業協同組合長会」は、反対の理由として風評被害による魚価下落などの影響を強調した。観光関連事業者からも、観光客の減少を懸念する声が高まっている。市長は市議会と対立することがあっても、受け入れにより深刻化が懸念される市民の分断の回避を重視した。