米メディア王マードック氏引退 長男にバトン、11月に
【ニューヨーク=清水石珠実】米「メディア王」ルパート・マードック氏が経営の最前線から退くことが分かった。フォックス・コーポレーションとニューズ・コーポレーションが21日、社員向けの書簡で同氏が11月に会長職を退任し、それぞれの名誉会長に退くと発表した。長男のラクラン・マードック氏が単独で会長を務めることになる。
ルパート氏は92歳。父親から引き継いだオーストラリアの新聞事業を基盤に、一代で世界を代表するメディア企業を育てた。だが高齢のため、最近は経営手腕への不安がささやかれていた。
例えば、2020年の米大統領選を巡る報道で、フォックス傘下のケーブル報道局「FOXニュース」が複数の名誉毀損訴訟を抱えた。今年4月、原告の投票機メーカーの1つと和解にこぎつけたが、和解額は7億8750万ドル(当時の為替レートで約1090億円)と米国の名誉毀損訴訟としては最高水準の損失を出し、投資家の批判を浴びた。
この騒動を巡って流出した資料で、FOXニュース内の経営が混乱している様子も白日の下にさらされた。また、22年後半にはフォックスとニューズの合併を模索したが、最終的には有力株主の賛成を得られずに23年1月に計画撤回に追い込まれた。
ルパート氏は、プライベートでもドタバタが目立っていた。22年、約6年連れ添った4人目の妻ジェリー・ホール氏と突然離婚。23年3月には保守系のラジオパーソナリティーの女性と婚約したことを明かしたが、2週間後には婚約破棄を発表した。
書簡のなかでルパート氏は「自らは極めて健康だ」と述べた。名誉会長に退いたのちも、「フォックスやニューズが提供するコンテンツには毎日目を通して、意見交換に参加したい」と述べた。
また、「(フォックスとニューズの)経営は健全だ」とも記した。インターネットの台頭などで事業環境は変化しているものの「(両社の)成長の可能性はこうした逆風よりも大きい」と続けた。