基準地価上昇率がコロナ前水準回復 全国2年連続プラス
国土交通省は19日、2023年の基準地価を発表した。住宅地や商業地など全用途の全国平均が前年比1.0%上がり、2年連続のプラスだった。新型コロナウイルス禍からの経済再開が追い風となり、上昇率はコロナ前の19年の0.4%を上回った。回復基調は全国に広がっている。
全国2万1381地点で7月1日時点の地価動向を調べた。住宅地の全国平均は前年比0.7%伸びた。商業地は1.5%上がり、いずれも2年連続の上昇となった。地方圏も全用途平均、住宅地、商業地がそれぞれプラスに転じた。
コロナ下で全国の地価はマイナスに沈んだが、足元では回復の勢いが増している。三大都市圏の全用途平均は19年の2.1%から2.7%に伸び率が拡大。地方圏は19年のマイナス0.3%からプラス0.3%まで戻した。特に住宅地は31年ぶりにプラスとなった。
東京23区の1平方メートルあたりの平均価格は168万円で、バブルで高騰した1990年代初めと比べると4割程度の水準にある。上昇基調を今後も維持できるかが焦点となる。
全国の商業地は22年の前年比0.5%から23年は同1.5%まで伸び率が広がった。商業地で地価が全国トップだった東京・銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」は4年ぶりのプラスに転じた。1平方㍍あたりの地価は4010万円で前年比2%伸びた。
経済活動の再開とともに都市圏を中心にインバウンド(訪日外国人)の流入が増え、繁華街や観光地の地価を押し上げた。22年10月の水際措置の緩和以降、足元の訪日客数はコロナ前の19年の8割に迫る水準まで戻っている。
低金利下で安定した収益が見込める都市部の不動産に海外から投資マネーが流れ込んだことも下支えとなった。
ニッセイ基礎研究所金融研究部の佐久間誠・主任研究員は「インバウンド増加などコロナ禍からの回復に伴う追い風はおおむね出尽くした。今後は金利状況などで上昇率が鈍化する可能性がある」と分析する。
商業地で変動率がプラスとなった都道府県は22地点で、昨年の18地点から4地点増えた。地方での持ち直しが顕著で、福島、石川、滋賀、奈良が新たにプラスに持ち直した。
住宅地は札幌、仙台、広島、福岡の「地方4市」がけん引した。札幌駅までのアクセスが便利な北海道恵庭市の中心部は上昇率20%を超える地点が多かった。人口集中の進む札幌市から周辺に住宅需要が広がっている。
人口減少や災害の発生によって地価の下落が目立つ地区もあった。石川県能登半島の珠洲市中心部の住宅地はマイナス10.6%となった地点があり、下落率が全国で最も高かった。同地域では23年に最大震度6強の地震が発生した。
【北海道・東北の基準地価】
- ・北海道、全国平均上回る伸び ラピダス効果で
- ・東北、福島県の商業地4年ぶり上昇 人流回復
- 【関東の基準地価】
- ・北関東、茨城2年連続上昇 群馬・栃木は下落
- ・埼玉県、住宅地・商業地とも2年連続上昇
- ・東京都、商業地2年連続上昇 住宅は11年連続
- ・千葉県、住宅地2年連続上昇 市川市が首位
- ・神奈川県、住宅地2年連続上昇 在宅勤務浸透
- 【中部の基準地価】
- ・山梨県、31年連続下落 下げ幅は縮小
- ・静岡県、15年連続下落 工業地は2年連続上昇
- ・北陸3県、石川県の商業地4年ぶり上昇
- ・信越、下落幅縮小 長野は観光・移住需要強く
- ・愛知県、住宅地・商業地とも3年連続上昇
- 【近畿・中国・四国の基準地価】
- ・関西、大阪や京都など5府県で商業地が上昇
- ・中国5県、商業地が4年ぶり上昇 広島駅8.8%
- ・四国、下げ幅2年連続で縮小 コロナ脱却へ
- 【九州・沖縄の基準地価】
- ・沖縄県、上昇率首位 熊本もTSMC効果で伸び
- ・鹿児島の種子島、商業地28年ぶり上昇 馬毛島に基地
土地を売買するときの目安となる価格。都道府県が不動産鑑定士の評価を踏まえて毎年7月1日時点の価格を調査し、国土交通省が9月にまとめて公表する。1平方メートル当たりの価格を算出する。地価動向は用途別に「住宅地」「商業地」「工業地」に分類して示す。 地価調査にはほかに国交省が3月に公表する公示地価、国税庁が夏に公表する路線価がある。いずれも1月1日時点の地価を算出する。公示地価は市街地が中心で、基準地価は地方の山林も含む。路線価は主要な道路に面した土地を対象にし、相続税や贈与税の算定に使う。