ユニクロ社長に塚越氏、ファストリ柳井社長体制は継続
ファーストリテイリングは28日、子会社ユニクロの社長に塚越大介取締役(44)が9月1日付で就任すると発表した。柳井正ファストリ会長兼社長(74)のユニクロでの役職は会長兼社長から会長兼最高経営責任者(CEO)となる。米国事業を黒字化した塚越氏の下でユニクロの海外事業をさらに成長させる。ファストリ全体のかじ取りは柳井氏が担い続けるが、次世代の経営体制づくりを進める。
ユニクロはファストリが持ち株会社体制に移行した2005年に事業会社として発足した。ユニクロの社長交代は初めて。
塚越氏は02年にファストリに入社。19年にグループ上席執行役員に就任した。ユニクロの米国事業やカナダ事業を担当し、22年からはユニクロ事業のグローバルCEOを務めている。
最大の功績は、ユニクロの米国事業の黒字化だ。05年の参入以降、赤字が続いていたが、22年8月期に初めて黒字化した。ケーブルテレビやSNS、新聞で積極的に広告を打ち、ブランドの認知度を高めたほか、米国顧客の声をもとに「クロップドTシャツ」や「ダメージジーンズ」などのヒット商品を開発した。
22年8月期の海外ユニクロ事業の売上収益は1兆1187億円と、国内ユニクロ事業(8102億円)を4割上回る。ファストリが掲げる「10年後に連結売上高で3倍以上の10兆円」の構想を実現するうえでは海外事業のさらなる成長が必須になる。米国事業を軌道に乗せた塚越氏がユニクロ全体を見ることで、他の地域や国の事業もより強化できると判断したようだ。
ファストリは交代の理由について「各国・各地域の経営者と共に築く次世代経営チームおよび各部門が連携し合うグループ一体の全員経営体制づくりを加速し、経営の質を向上させていく」と説明している。
今後の焦点は、ファストリ社長を巡っての柳井氏の後継者選びだ。柳井氏は02年に玉塚元一氏(現ロッテホールディングス社長)に社長の座を譲ったが、05年には玉塚氏を更迭し、会長兼務で社長に復帰。以来、20年ほど経営の第一線に立ち続けている。
現在、柳井氏の息子の一海氏と康治氏がファストリ取締役に就いている。柳井氏はかねて2人については業務執行の責任を負う社長にはしない方針を示している。
今回のユニクロ社長交代は「柳井氏の権限委譲や禅譲を見据えたものではない」(ファストリ関係者)との声があがる一方で、塚越氏については「有力な後継者候補の一人」との見方があった。塚越氏がユニクロ社長として経営手腕を発揮できるかが、ファストリが次世代の経営体制に移行できるかの焦点となる。