北朝鮮、衛星再発射「失敗」 沖縄上空通過しEEZ外落下
政府、沖縄にJアラート 迎撃せず
政府は24日未明、北朝鮮が人工衛星の可能性がある飛行体を発射したと発表した。沖縄県の上空を通過し日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落ちた。北朝鮮の朝鮮中央通信は「軍事偵察衛星」の打ち上げに失敗したと報じた。
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政府は沖縄県に全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令し避難を促した。沖縄本島と宮古島の間の上空を飛行し太平洋へ通過したため避難の呼びかけを解除した。発射物への迎撃措置はとらなかった。現時点で被害は確認されていない。
防衛省によると北朝鮮北西部から24日午前3時51分ごろに1発が発射され、複数に分離した。
午前4時ごろまでに日本のEEZ外にあたる朝鮮半島の西300キロほどの黄海、南西およそ350キロの東シナ海、フィリピンの東600キロ程度の太平洋にそれぞれ落下したと推定されるという。いずれも北朝鮮が予告した区域の外に落下した。
岸田文雄首相は24日午前、首相官邸で記者団に「今回の発射によって地球周回軌道への投入は確認されておらず、失敗したと受け止めている」と述べた。韓国政府も同様の見方を示した。
首相は関係省庁に①情報収集・分析に全力を挙げ国民に迅速・的確に情報を提供②航空機や船舶の安全確認③不測の事態に備えた万全の態勢――の3点を指示した。官邸で開いた国家安全保障会議(NSC)で関係閣僚と協議した。
松野博一官房長官は記者会見で「航空機や船舶、住民の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ」と話した。北京の大使館ルートを通じて厳重に抗議し非難したと明かした。
日米韓3カ国の外相は24日午前、15分ほど電話協議を開いた。北朝鮮のミサイル発射を非難し「地域の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威だ」との認識で一致した。3カ国で抑止力の強化で連携すると申し合わせた。
朝鮮中央通信によると、北朝鮮は偵察衛星「万里鏡1号」を新型運搬ロケット「千里馬1」型に搭載して発射した。衛星運搬ロケットの1段目と2段目は正常に飛行したが3段目の飛行中に事故が起きた。
北朝鮮の国家宇宙開発局は「原因を徹底的に究明する」と説明した。10月に3回目の発射を予定する。
北朝鮮は24日午前0時から31日午前0時の間に「人工衛星」を打ち上げると海上保安庁に通告していた。5月31日に万里鏡1号をロケットに搭載して打ち上げたが黄海上に墜落し、近いうちの再発射を主張していた。
今回の事前通告は落下予想地域を前回と同じ黄海、東シナ海、フィリピン・ルソン島東と指定した。浜田靖一防衛相は5月29日に自衛隊に出した破壊措置命令を続けていた。
自衛隊は迎撃部隊を沖縄県に重点的に展開した。海上のイージス艦から迎撃するミサイル「SM3」や、地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)で迎え撃つ態勢をとった。
イージス艦は東シナ海に派遣した。PAC3は防衛省がある東京・市谷や沖縄本島のほか先島諸島の与那国島や石垣島、宮古島に配備した。
発射物を探知・追尾し軌道や落下点を予測する部隊も態勢を整えた。落下した場合に危険な物質の除去やけが人の救護にあたる部隊も沖縄に送った。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記のもと、ミサイル発射や核開発などをすすめる北朝鮮。日本・アメリカ・韓国との対立など北朝鮮問題に関する最新のニュースをお届けします。