エーザイ認知症薬「レカネマブ」承認へ 厚労省部会了承
厚生労働省の専門部会は21日、エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の承認を了承した。アルツハイマー病の進行を緩やかにする効果を証明した薬として国内初となり、これまで対症療法に限られていた認知症治療の大きな一歩となる。
専門部会の了承を受けて、厚労相が近日中に正式に承認する。エーザイは1月、レカネマブの製造販売について医薬品医療機器総合機構(PMDA)に承認申請し、厚労省から審査期間を短くする「優先審査品目」に指定されていた。
仮に8月中に厚労相が承認した場合、実際に日本の医療現場で使えるようになるのは早くて10月、遅くとも11月になる見通しだ。
承認後に実際の医療現場で使用するには、薬価を決める必要がある。健康保険などの公的医療保険の適用対象とするためだ。算定議論は製造販売承認より原則60日から90日ほどかかる。
7月上旬に承認された米国の薬価は年2万6500ドル(約390万円)で、今後は国内の薬価算定に注目が集まる。
レカネマブは病気の根治につながる薬ではない。投与の対象は、日常生活に支障がない「早期段階」の比較的症状の軽い患者に限られる。
アルツハイマー病は脳に「アミロイドベータ」というたんぱく質がたまり、正常な神経細胞が壊れて脳萎縮がおこる。レカネマブはこの「アミロイドベータ」を除去することで病気の進行を遅らせる。臨床試験(治験)では、病気の進行速度を27%緩やかにする効果が確認された。
アルツハイマー病の主な症状は、記憶喪失や、適切な言葉が見つからない、人の話を理解できないといったものだ。国内では認知症患者のうちアルツハイマー病患者が最も多く、全体の6割以上を占める。
長寿化に伴い、アルツハイマー病の患者数は世界で急増している。国際アルツハイマー病協会によると、現在5000万人とされる患者数は、2050年に1億5000万人まで増えるといい、新薬への期待は高い。
認知症は患者や家族に物心両面で重い負担をかける。新薬への期待が高まる一方、患者の薬剤費負担をどう軽減するかが今後の課題となりそうだ。
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