GPIFの4〜6月、黒字最高の19兆円 株高・円安がけん引
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は4日、2023年4〜6月期の運用成績が18兆9834億円の黒字だったと発表した。株高や円安が利益を押し上げ、四半期の黒字額として過去最高だった。足元では株の保有比率が増え、運用ルール上売却を迫られている。株への売り圧力となる可能性がある。
収益率は9.49%のプラスだった。黒字額はこれまで最高だった20年4〜6月期の12兆4868億円を大きく上回った。資産別の損益額は国内株式で7兆886億円、外国株式で7兆8196億円、国内債券で1761億円、外国債券で3兆8990億円の黒字だった。6月末時点の運用資産額は219兆1736億円で過去最高を更新した。
23年4〜6月は国内株式に海外投資家からの資金が流入し、日経平均株価はバブル後最高値を更新するなど3カ月で5000円以上上昇した。国内株式の上昇が黒字をけん引したほか、米国など海外株式の上昇も利益を押し上げた。
ドルやユーロに対して円安が進んだことも追い風になった。円安が進むと、外貨建て資産を円で換算した評価額は増える。GPIFは資産の約半分を外貨建ての株式や債券に投資しており、円安が資産全体の評価額を4.5%程度押し上げた。
中長期的な資産構成割合(基本ポートフォリオ)は国内と外国の株式、債券でそれぞれ25%ずつを目安にしている。相場の変動で保有比率は日々変化するため、GPIFは定期的に比率が高まった資産を売り、比率が下がった資産を買う資産の再配分(リバランス)を実施している。上昇した資産は着実に利益を確定し、下落した資産を安く買う効果がある。
ところが、足元ではこうした投資行動が株安局面での株売りとなる可能性が浮上している。
7月以降、世界的に景気減速懸念が後退し、米国を中心に海外金利が上昇。債券価格が下落している。日本でも日銀が7月に長期金利の上限を事実上引き上げ、新発10年国債利回りは足元で0.6%台と14年1月以来およそ9年半ぶりの水準まで上昇している。
GPIFが投資の基準としている株価や債券指数によると、7月から足元までに内外の債券は2%超下落した。米国債の格下げなどを背景に株価も下落しているが、国内株式と外国株式の下落率は1%以下と債券より小さい。
結果的に下落幅の小さい国内株式と外国株式は総資産に占める割合が高くなっているとみられる。野村証券の桑原真樹シニア金利ストラテジストは「7月以降に国内株式で約1兆円、外国株式で約3.6兆円の売りが生じている可能性がある」と試算する。
株式と債券どちらにも逆風が吹く中、債券安が大きく進み、株式の売りを余儀なくされている状況だ。4〜6月に株価が急速に上昇した半面、投資家の高値警戒感も強い。金利が一段と上昇すればGPIFによるリバランスが株価下落を助長する可能性がある。
GPIFがリスクの計測に使う確率論のモデルによると、4〜6月のプラス9.49%の収益率は36四半期に一度の確率だという。長期視点の運用に徹し、安定的な収益獲得を目指すことが重要になる。
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