そごう・西武社長に田口広人氏 前社長は解任、売却急ぐ
セブン&アイ・ホールディングス(HD)と百貨店子会社のそごう・西武は1日、同社の田口広人取締役常務執行役員(62)が同日付で新社長に就任したと発表した。林拓二社長(70)は解任された。新たにセブン側から3人の取締役が就任する人事も決めるなどセブン色が強まる。米ファンドへのそごう・西武の売却手続き完了に向けて、早期に道筋を付ける狙いだ。
田口氏は1985年に西武百貨店に入社した「プロパー」人材だ。一方でセブン傘下入りの後には、セブンのネット関連事業の幹部を務めるなどデジタル分野に精通し、セブングループに約10年間在籍していた経歴も持つ。
西武百出身の山口公義取締役がそごう・西武の副社長に就任した。これまでは取締役8人のうちそごう・西武側が6人だったが、新しい経営体制では10人中半数がセブン側となった。そごう・西武によると西武百出身の林氏は1日付で解任され、退職したという。
セブンは同日、今回の経営体制の変更について「新役員体制の下、新たな百貨店ビジネスを創造しお客様に提供する価値の向上に向け、まい進していく」とのコメントを発表した。
今回、セブン側がそごう・西武の経営体制の変更に踏み切ったのは、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループへの百貨店売却の手続きを巡って関係者での調整が難航していることが背景にある。
セブンは2022年11月、フォートレスに売却することで基本合意した。当初は売却完了日を23年2月1日としていたが、関係者との調整に時間がかかり「3月中」に延期。その後、さらに時期を4月以降に再延期している。
再延期後も関係者との調整が続いている。東京都豊島区の高際みゆき区長は7月の定例会見で西武池袋本店(東京・豊島)の改装について「(関係者の)合意が得られる見通しはない」と述べた。
改装を巡ってはそごう・西武労働組合(組合員数約4000人)が7月下旬にストライキ(スト)権を確立し、セブン側にそごう・西武売却後の事業計画や雇用継続についての情報開示などを求めるなど、関係者の理解を得たうえで売却手続きを進めるにはなお時間がかかりそうだ。
セブンや出店を予定するヨドバシホールディングス(HD)、豊島区、西武ホールディングスの首脳らが参加する会合が7月21日に開催されたが、林前社長が西武池袋本店の改装について慎重姿勢を示すなど、親会社のセブンと子会社のそごう・西武の間でも意見の相違があったようだ。
セブン幹部は「セブンとそごう・西武で目指すべき方向は一致しているが、スピード感などが異なる」と指摘。「前体制からさらに交渉を推進していくために新社長を選んだ」と明かした。
セブンは新経営陣を通じて早期の売却に向けて関係者の合意を得たい考え。ただ、これまで自治体や労組などとの交渉を担ってきた林前社長の突然の交代劇を受けて、地元自治体や労組などの反発を招く可能性もある。
(斎藤萌、原欣宏、篠原英樹)
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