規制委、東電の原発処理水設備に「合格」 放出準備整う
原子力規制委員会は7日、政府が8月にも始める東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出に関し、関連設備の使用前検査の「合格」を示す終了証を東電に交付した。政府は放出に向けた安全性の評価作業を全て終えた。
具体的な放出日程の調整を進める。福島県など地元の漁業関係者らの理解を求める取り組みは続ける。
- 【関連記事】福島第一原発の処理水、海にどう放出? 3Dで解説
規制委の事務局である原子力規制庁の職員が7日、都内で東電の処理水対策の責任者に終了証を手渡した。規制委は6月28〜30日に処理水の移送・希釈・放出設備の最終検査を実施した。トラブル時に備える緊急遮断弁などの性能も現地で確認した。
これで放出に必要な設備面の条件は整った。処理水を測定する設備の検査はすでに3月に合格。東電も6月に放出用の海底トンネルを含む工事を完了させた。
国際原子力機関(IAEA)は7月4日の報告書で「処理水の放出が人と環境に及ぼす放射線の影響は無視できるほどわずか」と評価した。
西村康稔経済産業相は7日の記者会見で、放出時期について「安全性の確保、風評対策の取り組みの状況を政府全体で確認して判断する」と述べた。
地元の漁業関係者は反対姿勢を変えていない。福島県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は5日、経産省主催の意見交換会で改めて反対する考えを強調した。
IAEAのグロッシ事務局長は7日、都内で記者会見し、地元理解を得るには「丁寧に説明し、正直に包み隠さずすべての質問に答えることが必要だ」と語った。
中国など一部の国からも批判がある。ロシア外務省のザハロワ情報局長は6日、中国と連携して透明性を求めていく意向を示した。韓国政府は7日に独自の検証結果を公表した。
グロッシ氏は7日夜まで日本に滞在した後、韓国を訪問する。韓国政府関係者や放出に反対している野党の議員とも面談し、IAEAの報告書の内容などを説明する。7日の記者会見では処理水の国境を越えた影響について「ほとんどない。測定できないくらい微量だ」と話した。
東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出が始まりました。放射性物質トリチウムの処理水1リットルあたり濃度が国の安全基準の40分の1(1500ベクレル)未満であることを確認して放出。政府と東電は風評被害を防ぐため監視データを定期的に公表し、国内外に安全性を示します。周辺国では韓国政府が一定の理解を示す一方、中国は水産物輸入を全面停止するなど反発を強めています。
原発処理水とは(2023年8月23日掲載) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA223OR0S3A820C2000000/
関連企業・業界