原発処理水放出設備の検査、7日に合格へ 原子力規制委
原子力規制委員会は5日、政府が8月にも開始する東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出に関し、放出前の設備検査の「合格」に相当する終了証を7日に東電に交付する方針を明らかにした。海洋放出に向けた政府側の安全性の評価作業はすべて終わり、放出に向けた準備が整う。
規制委の事務局である原子力規制庁が5日午前、規制委に対し6月28日から3日間の日程で実施した検査結果で特段の問題がなかったと報告した。事務手続きを経て、7日に終了証を交付する方針も示した。委員側から異論は出ず、規制委が事実上「合格」の方針を認めた。
東電は6月26日、処理水を海洋放出するための海底トンネルを含む設備を完成させた。規制委は同月28日から緊急時に備える遮断弁や、処理水を海水と混ぜて希釈する設備などを現地で確認した。
7月4日に公表した報告書で国際原子力機関(IAEA)は「処理水の放出が人と環境に及ぼす放射線の影響は無視できるほどわずか」と指摘した。さらに終了証の交付により、放出前の設備面での準備はすべて整った。だが現地の漁業関係者や中国など一部の国の反対姿勢は変わっていない。
松野博一官房長官は5日の記者会見で中国による海洋放出への批判を受け「事実に反する内容を発信している」と反論した。漁業関係者に対しては「意思疎通を密にして丁寧な説明と意見交換を重ねていきたい」と強調した。
韓国政府は5日、処理水の海洋放出をめぐり「IAEAの発表を尊重する」とする立場を表明した。IAEAの4日の報告書をよく分析すると説明した。首相の補佐機関「国務調整室」の幹部が5日の記者会見で明らかにした。
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(更新)
東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出が始まりました。放射性物質トリチウムの処理水1リットルあたり濃度が国の安全基準の40分の1(1500ベクレル)未満であることを確認して放出。政府と東電は風評被害を防ぐため監視データを定期的に公表し、国内外に安全性を示します。周辺国では韓国政府が一定の理解を示す一方、中国は水産物輸入を全面停止するなど反発を強めています。
原発処理水とは(2023年8月23日掲載) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA223OR0S3A820C2000000/