大企業製造業の景況感、7四半期ぶり改善 日銀6月短観
日銀が3日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の3月調査から4ポイント改善してプラス5だった。7四半期ぶりに改善に転じた。供給制約の影響が和らいだ。大企業非製造業は新型コロナウイルス禍から経済回復が進みプラス23と前回から3ポイント改善した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。6月調査の回答期間は5月29日〜6月30日、回答基準日は6月13日だった。
大企業製造業の業況判断DIはプラス5と、QUICKが集計した市場予想の中央値(プラス3)を2ポイント上回った。半導体不足などの供給制約が緩和し、生産が回復している自動車がプラス5と前回から14ポイント改善した。資源価格やエネルギー価格の上昇も一服した。石油・石炭製品はマイナス6と40ポイント改善した。
一方、海外経済の減速で需要が低迷し、電気機械は前回から1ポイント悪化のプラス2となった。生産用機械もプラス20と前回から4ポイント悪化した。
先行きは大企業製造業全体でプラス9と足元からさらに4ポイントの改善を見込む。全体では価格転嫁が進んでいることや原材料コスト高の一服から好調となりそうだが、海外経済への懸念は根強く、一部業種では悪化予想もみられる。
非製造業は経済活動の正常化で景況感の改善が続く。大企業非製造業の業況判断DIはプラス23と、市場予想の中央値(プラス22)を1ポイント上回った。5四半期連続で改善した。
コロナ禍で落ち込んだ対個人サービスは、4ポイント改善のプラス28だった。訪日外国人(インバウンド)の増加で宿泊・飲食サービスは36ポイントと大きく改善しプラス36だった。改善幅、水準ともに2004年の調査開始以来最大となった。
先行きは大企業非製造業全体でプラス20と3ポイントの悪化を見込む。人手不足から来る人件費の上昇や、物価高で消費を手控える動きが広がる懸念が今後の景況感に影響しているもようだ。
販売価格が「上昇」と答えた割合から「下落」の割合を引いた販売価格判断DIは、大企業製造業でプラス34と3ポイント悪化した。仕入れ価格判断DIは大企業製造業が8ポイント悪化のプラス52だった。
いずれも2四半期連続の悪化となったが、水準はなお高い。日銀の担当者は「原材料の上昇を転嫁する動きはまだあり、もうしばらく動向を見ていく必要がありそうだ」と分析する。
物価上昇率の見通しは、全規模全産業の1年後の見通し平均で前回調査からわずかに低下し前年比2.6%上昇となった。3年後の見通しは2.2%、5年後の見通しは2.1%と、いずれも政府・日銀が掲げる2%の物価目標を上回って推移するとみる。
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