JSRを革新機構が買収 TOB価格1株4350円、35%上乗せ
政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)は26日、TOB(株式公開買い付け)を通じて半導体材料のJSRを買収すると発表した。買い付け価格は1株当たり4350円で、買収が明らかになる直前の23日終値に35%の上乗せ幅(プレミアム)をつける。半導体材料の競争力を維持するため、国の関与の下、積極投資をしやすい環境を整える。
東証プライム市場に上場するJSR株すべての取得を目指し、12月下旬をメドにTOBを始める予定だ。買い付け総額は9039億円で、純有利子負債を含んだ買収総額は1兆円規模に達する。JSRは26日、JICによるTOBに賛同を表明し、同社の株主に応募を推奨した。TOBが成立すれば、JSR株は上場廃止となる。
JICはJSRを買収するための新会社へ5000億円程度を出資し、みずほ銀行が4000億円強を融資する。出資と融資の中間的な優先株や劣後ローンの計1000億円を複数の銀行が引き受ける。
JSRは半導体の製造で使うフォトレジスト(感光材)の先端品の世界シェアで首位。政府は半導体を戦略物資と定め、国内で先端品の量産に巨額の支援を始めた。国際競争力が強い素材分野でも成長投資を継続できる環境を整え、素材から製品までの半導体サプライチェーン(供給網)を強くする。
JSRは半導体材料で大胆な業界再編を目指す。顧客である半導体メーカーの規模が拡大し、相対的に交渉力が弱まっている。先端半導体に対応する技術開発競争も激しくなっており、積極投資が必要と判断した。研究開発や設備投資にとどまらず、国内の有望な競合他社の買収などを検討する。シェアの低いフォトレジスト以外の材料への投資も強化する。ライフサイエンス分野への投資は継続する。
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