中国アリババ、双頭体制へ 張会長兼CEOが9月退任
【上海=土居倫之】中国ネット通販最大手のアリババ集団は20日、張勇(ダニエル・チャン)会長兼最高経営責任者(CEO)が9月10日付で退任すると発表した。後任の会長には蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)副会長、CEOには傘下の淘天集団の会長を務める呉泳銘(エディー・ウー)氏がそれぞれ就任する。
蔡氏と呉氏はどちらも創業メンバーで、経営支配権を実質的に握る「パートナー」を務めている。アリババは成長鈍化に直面しており、双頭体制で再成長を目指す。退任する張氏は重点分野に位置付けるクラウド事業のトップに専念する。
急成長してきたアリババを取り巻く環境は中国政府のネット企業に対する統制強化と、市場の競争激化で一変した。
2020年秋に傘下の金融会社、アント・グループの上場が当局の圧力で延期に追い込まれ、21年4月には独占禁止法違反で過去最大となる182億2800万元(当時のレートで約3000億円)の制裁金が科された。
主力の国内ネット通販市場は、京東集団(JDドットコム)や拼多多(ピンドゥオドゥオ)などライバルとの激しい競争にさらされている。
アリババの23年3月期通期の売上高は前の期比2%増にとどまった。株式時価総額はピークの3分の1以下の水準で低迷する。
アリババは経営を効率化するため今春からグループを6事業に分割する組織再編に乗り出した。5月には生鮮スーパー、物流、クラウドの各事業を新規株式公開(IPO)する方針を公表した。
今回の人事は構造改革の一環とみられている。13年まで最高財務責任者(CFO)を務めていた蔡氏は資本市場に精通しており、再び成長軌道に乗せる役割を担う。