作家の平岩弓枝さん死去 91歳 「御宿かわせみ」
人気時代小説「御宿かわせみ」シリーズや「ありがとう」などのテレビドラマ脚本で知られる作家で、文化勲章受章者の平岩弓枝(ひらいわ・ゆみえ)さんが6月9日午前4時17分、間質性肺炎のため東京都内の病院で死去した。91歳だった。告別式は近親者で行った。喪主は長女、小池三佳さん。
東京・代々木八幡宮の一人娘として生まれる。日本女子大卒業後、作家の戸川幸夫に師事。その後戸川の勧めで、作家の長谷川伸が主宰する「新鷹会」に加わる。まもなく刀剣の世界を描いた短編「鏨師(たがねし)」を発表、1959年に27歳の若さで直木賞を受賞した。
73年、江戸後期の大川端の旅籠(はたご)を舞台とする代表作「御宿かわせみ」の連載を開始。2007年からは舞台を明治期に移した「新・御宿かわせみ」を連載した。単行本、文庫を合わせたシリーズ全体の発行部数は1500万部を超えている。市井に生きる人々の人情味あふれる物語が、読者の支持を集めた。
ほかの小説作品に、剣の名手である青年が表に出せない犯罪に立ち向かう「はやぶさ新八御用帳」シリーズ、大石内蔵助の妻に光を当てた「花影の花」(吉川英治文学賞)、師匠と弟子の成長を描いた「西遊記」(毎日芸術賞)などがある。
小説以外に、NHK「旅路」、TBS「肝っ玉かあさん」「ありがとう」などの人気テレビドラマや、「三味線お千代」「真夜中の招待状」といった芝居の脚本も手掛けた。
87年から2010年まで直木賞選考委員。04年文化功労者、16年文化勲章。
1969〜70年、日本経済新聞夕刊に小説「女の顔」を、2008年7月、日本経済新聞朝刊に「私の履歴書」を連載した。